「チャイナリスク」なのに、なぜ増やす? はま寿司200店、サイゼリヤ604店……日本企業の“ねじれ”スピン経済の歩き方(5/5 ページ)

» 2026年09月16日 06時00分 公開
[窪田順生ITmedia]
前のページへ 1|2|3|4|5       

「中国排斥ムード」が高まっている日本

 しかし、中国で急成長している日系チェーンの場合、中国で稼いだお金の多くは、中国でのさらなる成長への投資に回される。

 こうして日本企業の利益が中国で再投資される中で、バランスを取るという意味でも、中国人観光客による観光消費という「対中輸出」は重要だった。

 ところが、それがゴッソリ消えてしまった。しかも、いなくなっても痛くもかゆくもないというのが、今の日本社会のムードだ。さまざまな国から外国人観光客が訪れているので観光業への影響は限定的だ。マナーの悪い観光客が減って、混雑も解消されたことで、日本の観光地としての価値が高まったと主張する人もいる。

 しかも驚くのは、日本への渡航自粛によって、中国の航空会社や旅行代理店のほうが大打撃を受けているという、日本人にとっては留飲の下がるような話まで出てきていることだ。

中国人観光客はどこへ(出典:ゲッティイメージズ)

 国際観光では、一つの渡航先を選ばなくなれば、旅行者は別の国へ行くだけだ。実際、日本を訪れなくなった中国人観光客は、韓国やタイなどに向かっている。

 コロナ禍のように、世界中で観光が止まったのであれば、中国の航空会社や旅行会社が大きな打撃を受けるのも分かる。しかし、日本以外にも数多くの渡航先がある中で、日本への旅行が減っただけで、そこまで深刻な影響が出るのか。いずれにせよ、こうしたムードが続けば、当分の間、中国人観光客が戻ってくることはないだろう。ただし、これは「中国向け輸出」が減り、対中貿易赤字がさらに膨らむことを意味するわけではない。

 日本経済にとってはノーダメージだそうなので、それはいいとしても、個人的に気になるのは、やはり「声高に叫ばれる理想と現実のギャップ」だ。

 「中国人観光客が来なくても何も困らない! むしろ、困っているのは中国側だ!」と日本社会で声が上がる一方で、日本の大手チェーンは続々と中国大陸へ進出し、「中国の消費者」への依存を強めているのだ。

 地政学的にも、日本は中国と現実的に付き合っていくしかない。だが、今の状況は、それができているとは言い難い。

 ビジネスパーソンの皆さんは、イデオロギーに左右されることなく、日本経済にとって何がプラスになるのかという視点で、海外戦略を考えていただきたい。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル

 近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受


視聴無料・LIVE配信:
「AI格差」を乗り越え自走する現場をつくる「変わる情シス 2026 夏」

photo

  • 開催日:9月14日(月)〜 9月18日(金)
  • 形式:オンラインセミナー
  • 参加費:無料

前のページへ 1|2|3|4|5       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アイティメディアからのお知らせ

SaaS最新情報 by ITセレクトPR
あなたにおすすめの記事PR