“総合力のau”が関西で狙うターゲットは?──au関西支社に聞くInterview(2/2 ページ)

» 2006年10月23日 20時31分 公開
[神尾寿,ITmedia]
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3Gエリア、音楽、デザインはいまだに優位性がある

 auはこれまで3Gエリアの充実を筆頭に、音楽やデザインでドコモよりも優れていることが躍進の原動力になっていた。しかし、周知のとおり、ドコモは昨年後半からエリア・端末・サービスすべてにおいて急速な追い上げをかけており、その差はかなり縮まっている(7月25日の記事参照)。市場競争において、ドコモの追い上げによる影響はどれだけあるのだろうか。

 「3Gエリアで見ますと、今年の上期までは(ドコモのFOMAと比較しての)優位性は確かにありました。しかし、ドコモのキャッチアップも進んでいますから、これから優位性が薄れていくであろうという危機感は持っています。しかし、面エリアでの競争は差が縮まりましたが、これからは屋内など閉空間のエリア競争、質的な部分が争点になります。auとしてはこの部分に注力し、差別化していく考えです」(甘田氏)

 またドコモ関西のエリア戦略を見た時に、甘田氏が注目するのが、800MHz帯を使うFOMAプラスエリアの部分だ。

 「関西ではFOMAプラスエリアによるエリア拡大地域もかなりあるのですが、これはプラスエリア対応機でないと利用できない。ドコモのプラスエリア非対応機のユーザーは(auの)1つのターゲットになります」(甘田氏)

 一方、音楽とデザインについては、大阪など都市部が中心のニーズになるという。

 「大阪は東京に次いで大きな都市ですし、ここでは若年層を中心に音楽とデザインの需要があります。(auの)評価も高い地域だと考えています」(甘田氏)

au関西支社の販売チャネル戦略

 関西地域はauとツーカーをあわせたKDDIのシェアが31.8%ある。MNPにおけるKDDIの目標が、auでシェア30%を目指すというものなので、ツーカーを順調に取り込めば関西地域は当面の目標はクリアーできる。あとは、それ以上にシェアをどれだけ伸ばせるか、だ。

 「MNPの利用率は諸説ありますが、10〜30%くらいあると言われています。その一方でMNPを前にお客様が様子見に入り、解約率が低下している傾向も感じており、auとしては『MNPの流行感』を刺激して(MNPの)利用率を高めなければならない。

 また、今後は機種変更マーケットの一部が新規契約マーケットに移りますから、au関西としては新規(契約市場)での力を付けていかなければならないと考えています」(甘田氏)

 この取り組みの中で、auの総合力向上と並んで重要なのが、販売店であるauショップのクオリティ向上だ。甘田氏はそれを「店づくりと人づくり」と話す。

 「auショップがよくならないとブランド力が上がりませんし、顧客満足度も上がらない。(auでは)ハートフル資格やプロスタッフ資格などの認定資格がありますが、この取得に今年度は力を入れてきました。結局、(キャリア)ショップの対応力がないと、いいキャリアとして認めていただけませんからね」(甘田氏)

 au関西のエリアではauショップの販売比率が約55%ほどを占めるという。MNPは事務手続きが複雑になるため、キャリアショップの利用率が現状よりも高くなると予想される。その中でauショップのクオリティ向上は確かに重要だ(8月24日の記事参照)

 auショップのハードウェアの面では、過去に約500店舗あったショップ数を約400店舗まで整理統合し、床面積の拡大や出店場所の最適化を実施。新たなイメージの什器によるリニューアルも、「すでに、ほぼ100%の店舗で導入しました。店づくりという点では、(戦う)形は整ってきた」(甘田氏)。

 「auショップ対ドコモショップの戦いというのは、いわば地域戦ですから、これで終わりということはない。(MNP開始以降)ずっと続くわけですから、その時々で見直しや最適化をしていくことになるでしょう」(甘田氏)

 また、関西ならではの特徴としては、ショッピングセンター(SC)系の携帯電話販売店の占める位置が関東よりも高いことがある。特にSC系の携帯電話ショップは家族割の獲得率向上にも貢献しているという。関東は家電量販店の影響力が強いが、こと関西を考えると、複数の販売チャネルで特性に合わせたきめ細かなマーケティングを行う必要がある。

 「例えばauショップはブランド力訴求の拠点として考え、auブランドの囲い込み顧客を増やす。家電量販店と一般併売店はシェアを獲りにいく。PiPitはトヨタグループの管理顧客にauを浸透させていく。このように販売チャネルの特性に応じたマーケティング施策、チャネル戦略の推進をしています。また、チャネル戦略とは別に地域戦略も進行しています。こちらは(au関西支社)管轄エリアの中でも、ドコモが強い地域、ソフトバンクが強い地域といった細かな違いがありますので、それらを踏まえたマーケティングを行っています」(甘田氏)

今年度の目標の1つが「顧客満足度No.1」の獲得

 auは現在、全国的に「顧客満足度No.1はau」を訴えている。しかし、残念ながらau関西支社に限れば、地域の顧客満足度でドコモの後塵を拝しているのが現状だ(10月20日の記事参照)

 「去年は顧客満足度No.1になれなかったのですが、その前は(顧客満足度No.1が)取れていました。しかし現状でいえば、No.1でないのは事実です。

 これはあくまで私見ですが、J.D.パワーズの調査実施時期はauショップのリニューアルよりも前で、この時の評価を今も引きずってしまっている。店舗評価のポイントが総合評価に大きく影響を与えているという印象があります」(甘田氏)

 顧客満足度No.1が取れていないことは「私自身、気にしており、今年度の目標の1つはそこ(顧客満足度No.1の獲得)にある」(甘田氏)という。むろん、ドコモ関西も顧客満足度No.1の維持は目指しており、この分野の競争はさらに続きそうだ。

MNPはauにとって過去最大のチャンス

 甘田氏はMNP開始直後は「他社のPDCユーザーとFOMAプラスエリア非対応機ユーザーがターゲットになる」と話す。

 「特にPDCユーザーは重要だと考えています。MNPのタイミングはPDCユーザーの端末買い換え時期にあたります。

 さらにソフトバンクに至っては3Gエリアの拡大がまだまだこれからで、PDCユーザーの比率が極めて高い。そこは付け入る隙だと思いますし、(auとして)突いていかなければならない。PDCという技術がもはや過去のものだと考えた時に、今のソフトバンクの3Gで(ソフトバンクの)PDCユーザーを吸収できるのか、ということです」(甘田氏)

 甘田氏は過去にTACSやPDCからcdmaOneへの移行を経験し、今もツーカーのユーザーをauに迎え入れるミッションに取り組んでいる。だからこそ、2GのPDCから3Gへの移行期に生じる「流出リスク」が分かる。

 「ドコモやソフトバンクという枠組みは関係なく、狙うのは他社のPDCユーザー。その視点は強く持っていますね。我々は3Gエリアにおいて基本となる優位性があり、そこから総合力の高さに繋がっている。これは間違いないです。

 MNPはauにとって過去最大のチャンスですし、チャレンジャーという立場です。攻めの戦略を徹底します。MNP開始後のスタートダッシュが、全体を通しての勝敗にとって重要になるでしょう」(甘田氏)

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