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» 2006年11月09日 12時04分 公開

「玄関先のキャッシュレス」に成長の可能性 神尾寿の時事日想

佐川急便「e-コレクト」の成功に見られるように、宅配便やフードデリバリーのキャッシュレス決済は今後さらに伸びていく可能性が高い。FeliCa対応のハンディターミナル端末の普及は、利便性向上の大きな鍵となりそうだ。

[神尾寿,ITmedia]

 11月8日、三井住友カードがNTTドコモのおサイフケータイ機能を利用した携帯クレジット決済「iD」に対応する「モバイル型iD対応クレジット決済端末」を導入すると発表した(11月8日の記事参照)。これはFOMA通信モジュールとクレジット決済機能を内蔵したハンディターミナルであり、iD決済にも対応したもの。三井住友カードでは玄関先や催事場での利用を想定しているようだ。

 ハンディターミナル型のFeliCa決済端末は今後の成長が期待できる分野であり、特にデリバリーサービス向けは大きな成長の可能性がある。

 例えばFOMA通信モジュールを内蔵し、磁気式クレジットカードに対応したハンディターミナルを使う佐川急便の「e-コレクト」は、取り扱い決済金額で前期比20.8%増加の8858億円、取り扱い個数は前期比131.3%の増加と、成長率のトップになっている(2006年3月期決算)。日本では未だに非対面取引でのクレジットカード利用に消極的な消費者が多く、代引き着払いのニーズの高い。その一方で、玄関先で現金支払いをするのは面倒である。e-コレクトの成功の要因は、代引き着払いのニーズの高さに、クレジットカードの利便性を付加した点にあると言えるだろう。

デリバリーと玄関先キャッシュレスのニーズはともに拡大する

 現在、主なデリバリーサービスというと、宅配便の代引き着払いと宅配フードサービスが挙げられる。この分野は引き続き成長していくだろう。さらに今後はデリバリーサービスを始める業種は広がり、市場規模は拡大する。その大きな要因は、少子高齢化だ。

 少子高齢化によるデリバリーサービスの発達。これが顕著に表れるのが、地方・郊外、そして、かつて“ニュータウン”と呼ばれた、大規模開発された都市近郊の住宅街だ。これらの地域では現在、急速に高齢化と現役世代の流出が進んでいる。また両者に共通するのが、モータリゼーション以降のロードサイド型のまち作りが行われていることだ。クルマが使えないと不便、もしくは生活できない構造を持つのである。

 これは筆者の取材テーマの1つでもあるのだが、高齢者ドライバーの増加はすでに社会問題といってよいレベルになりつつある。2010年には約1400万人が高齢者ドライバーになり、交通事故の増加が看過できない問題になるだろう。高齢者ドライバーの自動車保険料高騰や運転免許更新制度の見直し、さらには運転免許返納の議論が起きるのは必至だ。

 この問題が難しいのは、生活にクルマが必要な地方郊外や都市近郊の住宅街ほど、高齢化と現役世代の流出が深刻なことである。しかも公共交通機関の衰退が著しいのも、このエリアだ。

 地域の少子高齢化と高齢者ドライバー問題。このモビリティの変質の中で、これから伸びていくのがデリバリーサービスだ。すでに一部のコンビニエンスストアが高齢者向けデリバリーサービスに乗り出しているが、この流れは今後さらに拡大する。様々な日常生活品やサービスが、デリバリーされるようになるだろう。

 そして玄関先キャッシュレスのニーズは、高齢者においてさらに高い。このことはすでに仙台のスーパー「アサノ」で実証されており、さらに先の「他人のサイフの中身が気になるアンケート」ほか筆者が関わった複数の調査でも“高齢者ほどキャッシュレスの利便性を求める”傾向が顕著に見られた。デリバリーサービスと玄関先のキャッシュレス化は、高齢者向けの分野にも様々な潜在市場がある。iDをはじめとするFeliCa決済が、さらに力を入れていくことに期待したい。

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