WiBroとHSDPAの商用サービス開始という大きなニュースがあった2006年の韓国携帯電話市場。4Gへ向けた大きな一歩を踏み出した1年であったといえる。一方で、従来は考えられなかったさまざまな驚くべき事件が起こった。事件の概要と、キャリアやメーカー、政府や当事者が取った解決策など、2006年の事件簿を振り返ってみよう。
2006年には、経営的に苦境に立たされるメーカーが多かった。7月には韓VK Mobileが事実上倒産し、大きな驚きと衝撃を与えた(7月21日の記事参照)。
そして現在、韓Pantechグループが危機に直面している。資金難により債権銀行による「ワークアウト(企業再生プログラム)」が推進されることとなったのだ(12月12日の記事参照)。
その後の18日、約20億ウォン(約2億5500万円)もの手形を決済できないことが確認されると、19日には不渡り説が流布。一時は株の売買取引が停止したものの、翌20日には再開している。
しかしPantechでは、こうした逆風の中でも国内外で端末を発表し活動し続けている。今後どうなるのか、状況を見守るしかないといった現状だ。
約370万ウォン(約44万1900円)という携帯電話料金の請求を苦に自殺してしまった中学生のニュースは、社会的に大きな波紋を投げかけた(3月7日の記事参照)。
これは2月中旬の出来事だが、それから数カ月経った今でも未成年と携帯電話を巡る問題が話題になっている。高額な携帯電話料金請求だけでなく、親名義の端末で成人向けサイトに接続したり、携帯に夢中になるあまり他のことに集中できなくなる“携帯電話中毒”など、さまざまな問題が浮上しているからだ。
キャリアでは18歳以下向けとなる「携帯電話を使いすぎないような料金制」を用意したほか、成人コンテンツを全面的に廃止するなど対策を打ち出している(10月25日の記事参照)。
また政府も、キャリアと共同による対策を用意した。そのうちの1つが青少年向けの「グリーン契約書」の発行だ。これは18歳以下のメンバーシップ制度や青少年料金制度に関する注意事項など、携帯利用において注意を喚起するような内容の契約書で、成人向けの契約書とは別に発行されるものだ。
さらに、成人コンテンツに接続可能で、かつ青少年料金制に加入できない親名義ではなく、本人名義で携帯電話に加入するよう促すキャンペーンを推進している。
対象となる思春期の青少年は、親の完全管理下にするほど自立心がないわけでもなく、そういってすべてを本人任せにするのも不安な世代。だからこそ制度的な規制も必要だ。政府とキャリアによる対策が実行されるのは2007年からで、それ以降、携帯電話と青少年に関連する問題が減るのか注目が集まる。
韓国では「テポフォン」が問題となった。テポフォンというのは、第三者名義で利用されている携帯電話のことで、犯罪によく利用されている。例えば紛失や盗難された携帯を、第三者名義で利用できるよう細工・改造し、詐欺取り引きなどの際に身元がばれないように利用するのだ。
ちなみに韓国ではこうした、名義が曖昧で不法の取り引きがなされている物に対して「テポ」がつけられていることが多い。たとえば車を売買する際、正規の名義移譲をせず、書類上と実際の所有者が異なる車を「テポ車」、本来の所有者と実際の利用者が異なり犯罪やわいろ受け取りなどに使われる通帳を「テポ通帳」などと呼ぶ場合もある。
テポフォンに関してはさまざまな事件が起きているが、11月には携帯電話の出会い系チャットサービスを運営していた業者がテポフォンを利用し、チャットサービスの広告SMSを送りつけていたうえ、これにより発生した利用料を支払わなかったとして逮捕されている。
当局の調べによるとこの業者は、約840万もの個人情報を競合他社サーバをハッキングすることにより調べ上げた後、ここへ計約1億通もの広告SMSを送りつけた。ここでテポフォンを利用したため、SMS送信で約30億ウォン(約3億8400万円)もの利用料が発生したが、これを支払うことはなかった。
これに対し韓国情報通信部では携帯電話の「不法複製防止対策」を用意した。2005年4月から段階的に、携帯電話に「A-Key」という認証のための秘密キーを搭載させ、通話のたびにキャリアのシステムと認証情報をやり取りし認証を行うというものだ。
この携帯電話では、たとえESN(Electronic Serial Number)の複製を行っても、A-Keyの認証も受けなければならないほか、A-keyによる認証情報は毎回変わるようになっているため不正利用を事前に防げるという。
情報通信部ではこうした対策で複製自体が難しくなるとはしているものの、不法携帯はいたちごっこであり、巧みになっていく犯罪を事前に防ぐ工夫が必要となりそうだ。
シェアは低いながら、話題を巻き起こすことが多いのが韓LG Telecom(以下、LGT)だ。LGTは2GHz帯の「IMT2000事業」(CDMA2000 1x EV-DV)を放棄したことで情報通信部からライセンスを取り消された後、CDMA2000 1xEV-DO Revison A(以下、EV-DO Rev.A)のサービスを行うと宣言していた(8月1日の記事参照)。
その後他社の反対などもあったもののLGTはこの方針で突き進み、11月初旬にEV-DO Rev.Aネットワーク構築のため関連設備設置承認申請書を韓国情報通信部に提出している。これに対する承認が降りればすぐにでも、LGTはEV-DO Rev.Aネットワーク構築に着手することとなる。商用サービスは2007年からの見込みだ。
さらにLGTといえば「気分ゾーン」サービスだが(5月11日の記事参照)、これに関しては固定電話会社からの不満が噴出。通信委員会も料金制の改正を命令していた(10月6日の記事参照)。
これを踏まえてLGTは2006年11月末、新たな料金制を、情報通信部に提出。その後発表した新料金制では、携帯電話から携帯電話への料金制が、既存の14.5ウォン/10秒から14ウォン/10秒に値下げされた。また気分ゾーン内で通話した場合、4時間以内の通話であれば39ウォン/3分、それ以上になると75ウォン/3分となる。既存の料金ではこうした時間の制約ではなく、市内外で通話料が異なっていた。
さらに2007年から実行予定の料金制は、気分ゾーン用端末がないために同サービスに加入できなかった人のためのものだ。この料金制に加入した人が固定電話に電話する場合、7〜13ウォン/10秒で通話可能となるなど、気分ゾーンの恩恵を受けられるようになる。
LGTは12月中旬に加入者が過去最大の700万人を突破した。2004年に600万人を突破して以来の大台で、着実に加入者を増やし続けている。気分ゾーンが端末なしで利用できるとあれば、さらなる加入者増大の弾みとなりそうだ。
2006年にもさまざまな事件が起こった韓国市場。まだ決着がついていないものや、2007年から実施という取り組みあるが、これらが今後どういった影響をもたらし、市場がどう変化していくのか見守っていきたいところだ。
プログラマーを経た後、雑誌、ネットなどでITを中心に執筆するライターに転身。現在、韓国はソウルにて活動中で、韓国に関する記事も多々。IT以外にも経済や女性誌関連記事も執筆するほか翻訳も行っている。
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