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» 2007年02月09日 22時27分 公開

乱立するモバイルテレビ規格、欧州キャリアの選択は欧州モバイルテレビ事情(3)

モバイルテレビの導入に向けた検討課題として挙げられるのが、どのブロードキャスト規格を採用するか。規格が乱立する中、欧州の各キャリアはどの規格に関心を持っているのか。

[末岡洋子,ITmedia]

 モバイルテレビを語るとき、避けられないトピックが“ブロードキャスト規格”だ。日本のワンセグは独自規格の「ISDB-T」に基づいたもので、世界ではブラジルが同じ規格を採用する動きをみせている。一方で世界のモバイルテレビに目を移すと、規格が乱立しているのが現状だ。

 欧州で優勢なのは、Nokiaら携帯電話メーカーが強く推す「DVB-H」(Digital Video Broadcasting for Handheld)。標準化団体DVB(Digital Video Broadcasting Project)が策定したモバイル向けの地上デジタル放送仕様で、バッファを利用して断続的にデータを受信することで消費電力を抑えるのが特徴だ。この規格はまた、ETSI(欧州通信規格協会)標準でもある。欧州で最初にブロードキャスト型モバイルテレビサービスを開始したと主張するイタリアの3 Italyも、同規格を採用。また、多くのオペレーターがこのDVB-Hベースのパイロットテストを行っている。

 欧州ではDVB-Hのほか、英Virgin Mobileが提供するモバイルテレビサービスのべースとなる規格「T-DMB」(Terrestrial-digital media broadcasting)もある(Virginは、英BTのDMBサービス「BT Movio」を利用している)。T-DMBは、欧州標準の「Eureka-147」をベースとしたデジタルラジオ放送規格「DAB」(Digital Audio Broadcasting)をマルチメディア向けに発展させたもので、World DAB Forumが仕様の策定や推進を行っている。同規格を利用して最初に商用サービスを開始したのは韓国で、欧州では商用サービスがはじまった英国とドイツのほか、ノルウェーなどの国がパイロットテストを展開。中国も同規格を支持しているようだ。

 DAB Forumの担当者は、DMBの強みとして「DABは低コストで柔軟性のある技術であり、チップソリューションも複数のベンダーから提供されている。DMBはDABをベースとしたもので、拡張性のあるサービスを実現する」と話す。すでにDMBをサポートした端末が、携帯電話からポータブルな専用端末まで140機種以上ある点も強調した。また、英国の「BT Movio」は開始当初から90%の人口カバー率を実現し、ラジオサービスも利用できる(現時点では、ラジオの受信率の方がテレビを上回っている)点が差別化ポイントになるという見方を示した。

台頭するQUALCOMMの「Media FLO」

 北米では、米QUALCOMMが中心となって開発した「Media FLO」が主流となりそうだ。すでに米Verizon Wirelessが同規格を採用したモバイルテレビサービス「V CAST Mobile TV」の立ち上げをアナウンスしている(1月9日の記事参照)。また、米国と規格が対立することの多い欧州でも、2006年夏に英国でパイロットテストが始まっている。日本ではKDDIソフトバンクが企画会社を立ち上げ、同規格を使ったモバイルテレビの可能性を探っている。

 QUALCOMMはFLO ForumというNPOを立ち上げてMedia FLOを推進しており、FLO Forumの会長を務めるカミール・A・クラジスキ氏は、Media FLOの特徴を次のように説明する。「クライアント/サーバーシステムを利用することで、暗号化されたコンテンツを効率のよく配信できる。CDMA2000や同1x EV-DO、W-CDMAなどさまざまな標準もサポートしている」(クラジスキ氏)。また、ユーザーが事前に申し込むことでテレビ番組をスケジュール配信できるクリップキャストなどの機能にも触れた。

 FLO Forumでは世界標準となることを目指し、ITUやETSIなどの標準化団体に仕様を提出している。FLO Forumにはチップメーカーや端末メーカー、通信オペレーター、コンテンツプロバイダなど60余の企業や団体が参加しており、幅広いエコシステムを確立したい考えだ。

 オペレーターにとって気になるモバイルテレビの実装コストは、Ovumのゾラー氏がフランスと英国におけるDVB-Hの実装コストを試算しており、人口の90%をカバーする場合、英国では1億4000万ユーロ、フランスでは3億1000万ユーロの実装コストが必要になるという。この場合のROIの回収は、ユーザーから月額10ユーロを課金したとして、3年かかることになる(想定ユーザーはフランス310万人、英国170万人)。こうしたことからも、どのようなビジネスモデルを構築するのかが重要なのは明白で、ゾラー氏は、「BT Movioのような卸売り型は検討の余地があるし、広告やインタラクティブなサービスの提供も考慮する必要がある」と述べた。

対応端末のラインアップ拡充はこれから

 モバイルテレビの普及に欠かせない対応端末のラインアップに目を移すと、まだ貧弱なことが分かる。端末メーカー最大手のNokiaは、同社のマルチメディア端末ブランド「NSeries」でモバイルテレビ(DVB-H準拠)のラインアップを強化する戦略だが、3Gのときと同様、端末メーカーも市場の様子を見ながらの投入となる。

 その一方で、ポータブルゲーム機や小型メディアプレーヤーなどがテレビチューナーを搭載しつつある。Ovumでは2006年の欧州市場におけるビデオ対応ポータブルメディアプレーヤーの出荷台数を約2000万台、ビデオ対応携帯電話の出荷台数を6000万台と見ており、2009〜2010年にはこの数字がそれぞれ7500万台、1億5000万台に達すると予測する。

 規格をベースとした端末の予想出荷台数は、2010年にはモバイルテレビ端末のうちDVB-Hベースの端末が60%を占め、T-DMB、S-DMB、ISDB-Tはそれぞれ5〜10%といわれている。

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