2005年、携帯電話市場のキーワードは「融合」〜野村総研(2/2 ページ)
定額制の開始や新規事業者の参入表明、2006年のナンバーポータビリティ導入──。2005年の携帯市場はキャリアと他業種の「融合」がキーワードになりそうだ。
2010年、携帯市場は20兆円市場に
現状、携帯電話は「市場はあるが、産業としての意識が薄い」と北氏は指摘。先般、総務省が発表したu-Japan戦略においても、携帯がインターネットユビキタスアプライアンスのコアには位置づけられているものの、それは政策ビジョンに過ぎず、産業ビジョンがないと話す。
「携帯電話産業をどうやって育成するか、我が国の産業競争力の強化を図る上で、携帯電話産業はどういう位置付けで、どういう意味を持たせていくのか」(北氏)
日本の携帯は、世界に先駆けて新しい機能を搭載しており、それが年間5000万台普及する市場を持っている。「関連する部材や半導体、ブラウザなどのメーカーは、アドバンテージが高く、世界に売れていく」(北氏)。
また、携帯電話に搭載されることでコストが低下し、ほかの産業での採用が見込めるものもある。その代表例がBluetoothモジュールや燃料電池だ。「携帯に載ることでコストが一気に下がれば、PCや情報家電、カーナビなどに採用される可能性も高まる」(北氏)
ほかの産業が携帯電話に期待する部分は多く「ほかの産業におよぼすメリットもきちんと考えながら、携帯電話産業を発展させていくための戦略を作らなくてはならない」とした。
「おおざっぱにいえば、ユーザーがキャリアに払う通信料が10兆円。携帯端末やハード、ソフトなどの部材が海外ベンダーに採用されることで3兆円くらい。量産効果でほかのアプライアンスに携帯の部材が採用されることに伴う収入が3兆円、モバイルエンタープライズソリューション市場の創出で3兆円」(北氏)
こうした構造を作るために「何が必要なのかを見極め、産業ビジョンを構築することが急務」というのが北氏の考えだ。
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ロードマップ、具体的な導入方法が見えてこないMNP
2006年にも開始予定のナンバーポータビリティは、スケジュールや導入方式が既にキャリアにゆだねられている。北氏は「キャリアから具体的な方式や日程が聞こえてこない」と懸念している。
問題の1つは、キャリアを移る際「ワンストップ」にするか「疑似ワンストップ」にするかだ(2004年4月の記事参照)。ワンストップは、ナンバーポータビリティに関わる手続きを1カ所で行えるようにするもの。既にナンバーポータビリティが導入されている韓国や米国ではこの方式が採用されており、ボーダフォンはワンストップで進めたい考えだ。
ただ、日本の携帯サービスには、年割や家族割、学割などさまざまな割引制度がある。1カ所で手続きを完了した場合、元のキャリアを解約する際に発生する違約金などの説明を行えなくなる。そうなれば家族割の解約などでは、ほかの家族の料金にも影響が出ることは必至。こうした観点から、ドコモとauは「疑似ワンストップ」を提案している。
ここで意見がかみ合わず、導入方式の決定が難航しているという。
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