どうなる、携帯のビジネス利用:2005年の携帯業界を振り返る(2)(4/4 ページ)
通信ジャーナリストの神尾寿氏とITmedia+Dモバイルの斎藤編集長が2005年の携帯電話業界を振り返る年末対談企画。第2回のテーマは「携帯のビジネス利用」と「新規参入」。2人が言いたい放題で、このテーマに斬り込む。
新規参入組に期待すること
ITmedia ようやく新規参入3社が決まりました。
神尾 一般論でいうと、入ってきた当初、少なくとも3年はそんなにインパクトはないと考えています。まずエリアの問題があるし、端末も見栄えだけの端末は出せるでしょうが、本当にいいものを作るのには時間がかかる。また、代理店も含めて販売店網とサポート拠点網を作るのにも時間がかかります。新規参入組には、むしろ「焦らない」でほしい。焦って、足下がおぼつかない状態で無理な販売拡大路線を取ると、'90年代後半のPHSの二の舞になりかねない。
なんだかんだいいながら、’90年代初期にドコモが最初の携帯電話市場を作って、本当にモノにするのに5年近くかかったわけです。当時と比べて市場価値が認められているのでそこまで時間はかからないとしても、3年はかかるでしょう。全国エリアをまともに動かそうとすると、3年では足りないかもしれない。そう考えると、参入するよりも、参入した後の方が彼らにとって難しいと思います。
どれだけユーザーを裏切らないか、というのが課題でしょう。ADSLとは全然事情が違って、彼らは用地確保からしなくちゃいけないんです。ある程度は既存キャリアの設備を借りられるでしょうが、それでも自前設備は必要です。用地を確保して、住民の皆様に「電磁波は安全です」と説明して、エリアを最適化して……そこからやらなくてはいけないんです。
ITmedia 3年はかかるだろうと。
神尾 始まってから、一般ユーザーが満足できるレベルに達するのに3年。そこから彼らの本当の意味でのビジネスの力が問われてくるのかな、と思います。
斎藤 新規参入組には端末の多様化とかシンプルな料金プランとか、そういうのをやっぱり期待したいです。黒船になってもらわないと今の状態は変わらないので。
神尾 でも、料金下げられますか?
斎藤 下げる必要はない、見せ方が大事だと思います。今からあえて複雑な課金システムを構築しようという新規参入会社がいるとしたら、時代逆行だねといってあげたいですが、シンプルなプランや分かりやすいプランを設けられるかどうかという点には期待したいです。
神尾 シンプルにすればするほど数字を見られてしまう。ということは、ある程度安く始めなくてはならない。でも設備のことを考えると、どう考えてもあまり安くできないと思うんです。高かったら論外ですけど、100円200円の差にしかならないような気がするんです。
斎藤 平均して100円200円でも、それを分かりやすいプランで見せてあげれば結構大きなインパクトがあると思うんです。例えばドコモのFOMAを使っている人が月3600円のタイプSSを選んでいるとします。でも、その人が月間でいくら払っているかって、全く想像つかない。料金プランを選ぶ人が「オレは月間いくら払うことになるんだろう」と思ってもたぶん想像つかない。このあたりを改善して分かりやすく見せればいいと思う。
ITmedia ウィルコムが、新規参入組のいいお手本になるんじゃないかと思いますが。
斎藤 ただ、あの価格は携帯電話でやるには大変だと思う。
ITmedia シンプルな料金体系という見せ方をするという点と、販売網に関してもウィルコムは自分のショップを持たないでやってます。
斎藤 ウィルコムと比べられれば比べられるほど、ツライ面もあるでしょうけどね。
神尾 新規参入組にユーザーが期待することは、すでにウィルコムがやっていたりするので、存在意義そのものを彼らはもっと作っていかなくてはならないでしょう。
ITmedia 読者アンケートの結果を見ると「安くなればいい」という意見がほとんどです。
神尾 コスト削減するには、端末に端末にインセンティブ を付けないか、販売店やサポート拠点網にコストをかけないか、どちらかになります。でもインセンティブなしの端末が売れるとはなかなか思えませんね。個人的には、最初から「安さ」を前面に出したら、新規参入組は辛くなるだけです。エリア構築中は「安いから……」の悪いイメージがつかないように腐心する必要がある。価格勝負は全国エリアが完成してからの方がいいでしょう。それまでは既存キャリアが手を出していないニッチ分野に注力した方がいいと思っています。
斎藤 インフラ構築コストは明らかに安くあがっているわけですから、あとはそれをどう見せていくか。通話料金を高くするか、安くするか、または端末の販売コストを高くするか安くするか、でしょう。
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