“オープン”なSymbian OSが携帯の進化を加速する──英Symbian:Interview(2/2 ページ)
世界の携帯電話向けOS市場で圧倒的なシェアを誇る英Symbian。同社自慢のSymbian OSの特徴や今後の進化の方向性について、調査研究担当副社長デビッド・ウッド氏に聞いた。
ビジネス向け端末市場におけるSymbianのプレゼンス
Symbian OSの高いセキュリティを始めとする多くの特徴は、ビジネス向けの携帯電話においても有用であるとウッド氏は話す。世界ではビジネス向け携帯の需要が急速に伸びており、日本でも2006年秋頃から急速に立ち上がりそうな気配だ。同氏は「ビジネス向けに特化した端末が出てくるという流れは非常に重要な傾向だと認識している」と言う。
「個人ユーザーは価格に敏感で、できることなら電話料金はあまり払いたくないと考えているが、ビジネスユーザーは携帯を使うことで自社のビジネスを伸ばせるなら、喜んで携帯の料金を払う。シリコンバレーは街の建設に1兆ドルほどのお金がかかっているが、これはビジネス向けのPCが売れたことで十分回収できている。携帯電話もビジネスに使われるようになれば、1兆ドルの売り上げになるかどうかは分からないが、非常に大きな額になるはずだ」(ウッド氏)
日本では、Symbian OSを搭載したビジネス向けの携帯として、モトローラの「M1000」や三菱電機の「D702iBCL」がリリースされている。またノキアの「702NK」「702NK II」「804NK」などもビジネスユースとの親和性が高い。ただ、現状では「W-ZERO3」や「W-ZERO3[es]」、Windows Mobileを搭載したPDAなどの方が、ビジネスの現場では多く利用されているという印象もある。Symbianがビジネス向け携帯市場でのプレゼンスについてどう考えているのか氏に聞いてみたところ、次のような答えが返ってきた。
「Microsoftの製品は、マーケティングや宣伝を積極的に行っているため認知度は高いが、実際の販売台数はそう多くない。ビジネス用途でもSymbian OSを搭載したデバイスの方が、Windows Mobileを搭載したモデルよりも多く使われていると思う。Symbian OSを搭載した端末はMicrosoft(Windows)のファイルフォーマットにもアクセスできるし、Exchangeのプロトコルでのやり取りもできる(2005年3月23日の記事参照)。Windows Mobileに対するアドバンテージも多数あるので、今後も優位に立てると思う」(ウッド氏)
Windows Mobileに対するアドバンテージは“パートナーとの信頼関係”
Symbian OSには、Windows Mobileに対して、技術的な部分と技術的ではない部分それぞれにアドバンテージがあるという。
技術的なアドバンテージは「バッテリー駆動時間が長いこと」だとウッド氏は話す。「Symbianという会社のバックグラウンド(あるいは文化)は、小型のバッテリーを搭載したデバイスにある。少ないバッテリーでいかに効率よくデバイスを動作させるかを、長年追求してきた。また、ソフトウェアは信頼性が高く堅牢だ。我々のOSを搭載したデバイスがリセットするのは本当に希なことだ」。
技術的でない部分としては、「パートナー企業はMicrosoftを信頼するよりもSymbianを信頼している」と話す。「Microsoftという企業の歴史や文化を見ると、価値を独占したり、支配したりする行為を繰り返してきたことが分かる。同社はPCの世界で、さまざまな価値を次々と自社のOSに取り込んでいった。MicrosoftがWindows Mobileで携帯業界に参入したことで、ナーバスになっている企業もある。SymbianのOSはオープン性を重視しているが、その理由は“お互いに信頼できる”ことが重要だからだ。Symbianは、パートナー企業と良好な信頼関係を維持していくことを最優先させている」。
Symbianは携帯をより安く、より速くする
ウッド氏は「これは退屈な答えなのだが」と前置きし、今後のSymbian OSの進化の方向性についても話した。
1つは動作速度を上げることだ。同氏は「携帯ユーザーに限らず、多くの人々は待つことを嫌う。初期のバージョンは、しばしば最適化しきれていないことがあり、ドコモ向け端末に初めてSymbian OSが搭載された時も『動作が遅い』と批判された(2005年6月28日の記事参照)。Symbianでは、常にOSの処理スピードの向上に取り組んでいる」と言い、同じチップセットを利用していても、OSのチューニングや最適化が進めば、動作速度は十分速くなるという見通しを話した。「OSはさまざまなソフトウェアの組み合わせなので、ツールなどを使ってシステムの動作を分析し、それらの動きを最適化する。まだ速度向上の余地はある」。
もう1つは端末の価格を安くすること。端末の低価格化には、ソフトウェアとハードウェアの両面でのアプローチがあるが、SymbianはOSのライセンス価格を下げる(3月29日の記事参照)と同時にOSを高機能化することで、端末にかかるコストを低減したい考えだ。具体的には、アプリケーション用のOSとは別に搭載されているネットワーク用のOSが持つ、基地局との通信などを行うリアルタイム機能をSymbian OSに取り込むことで、将来的にはネットワーク用OSを不要にする。
「我々は携帯をより安く、より速くして世界のマスマーケットに訴求していく。今後も多くのパートナー企業やサードパーティ企業が、自分たちのアプリケーションをSymbian OS上で走らせたいと考えてくれるはずだ」(ウッド氏)
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