共通インフラ化で普及ペースが加速──FeliCa決済は新たなフェーズに
JR東日本とドコモ、ジェーシービー、ビットワレットが共通インフラの利用で合意し、NECは6方式に対応するリーダー/ライターを開発した。FeliCa決済の共通インフラ化が本格的に動き始めた。
9月27日、JR東日本、NTTドコモ、ジェーシービー、ビットワレットの4社が、JR東日本とドコモが開発を進める「おサイフケータイ」と「Suica電子マネー」の共通インフラを共同で推進することで合意した(9月27日の記事参照)。詳しくはニュース記事に譲るが、来年1月から始まる共通インフラの導入により、FeliCa決済がこれまで抱えてきた「決済方式の乱立」による対応店舗の問題が解消に向かいそうだ。
同日、NECも1台で複数の電子マネーやモバイルクレジット決済に対応する汎用リーダー/ライターを開発したと発表した(9月27日の記事参照)。こちらはEdy、Suica、iD、QUICPay、Smartplus、Visa Touchに対応するもので、リーダー/ライターには、あとからオンライン経由でさまざまな電子決済アプリケーションを追加することも可能だという。急速に拡大するFeliCa決済市場において、来年のキーワードの1つが「共通インフラ化」になるのは間違いなさそうだ。
共通インフラ化で全国に拡散するSuica電子マネー
JR東日本、NTTドコモ、ジェーシービー、ビットワレットの4社提携では、共通インフラの導入以外にも、いくつか注目のポイントがある。
1つはJR東日本の「Suica電子マネー」の全国展開だ。周知のとおり、Suica電子マネーはIC交通乗車券システムであるSuicaに付随するものであり、これまで利用者の獲得と加盟店の開拓は、JR東日本がSuicaを展開する関東・新潟・仙台エリアを中心に行われてきた。福岡のビックカメラでSuica電子マネー利用できるといった事例などもあるが、あくまでJR東日本管内でSuicaに対応する「駅ナカ・駅チカ」展開が基本だったのだ。これはSuica電子マネーの利用率の高さの礎にもなっている。
しかし、今回の共通インフラ化が実現すれば、Suica電子マネー対応店舗は全国に広がることになる。これまでの公共交通を軸とした地域展開の電子マネーではなく、Edyのような全国区の電子マネーになるのだ。
「(JR東日本としては)Suica電子マネーを今後全国に広げていきたい。IC交通乗車券としては各地のJR各社と相互利用を進めていきますが、電子マネーとしてはSuica方式で広げる方針。Suica(乗車券システム)がない地域では、Suica電子マネーから先に普及するという事もあると考えています。特にモバイルSuicaは、おサイフケータイがあれば全国どこからでも利用できますから、(全国区での)Suica電子マネー普及に貢献するでしょう」(東日本旅客鉄道常務取締役IT事業本部長の小縣方樹氏)
共用ハンディターミナル型リーダーライターも登場
もう1つ注目のポイントが、今後の共通リーダー/ライターのラインアップである。今回、記者会見で発表されたのはオーソドックスなレジ向け据え置き型であるが、「ハンディターミナルなど共通リーダーライターのラインアップ拡大は計画している」(NTTドコモ取締役常務執行役員プロダクト&サービス本部長の辻村清行氏)という。
「例えばタクシーなどはFeliCa決済の利便性が際だつ分野ですから、ここで使うハンディターミナル型リーダー/ライターでも共通化が必要になっています。今後、(リーダー/ライターの)ラインアップ拡大は当然考えています」(辻村氏)
タクシーでのFeliCa決済対応では、東京無線タクシーが「iD」を採用(3月22日の記事参照)するほか、中央無線タクシーが「Edy」(4月10日の記事参照)、国際自動車と日本交通が「Suica電子マネー」(4月12日の記事参照)の採用を表明している。さらにトヨタファイナンスが、名古屋を中心とする愛知県においてタクシーでのQUICPay対応を進めていく方針を打ち出している(9月12日の記事参照)。
ほかにもハンディターミナル型のリーダー/ライターは、宅配便の着払い決済やイベント、レジスペースのない店舗で使えるなど応用性が高い。FeliCa決済の利用範囲を拡大する上で重要だ。
FeliCa決済の共通インフラ化は、FeliCa電子マネーやFeliCaクレジットが互いに切磋琢磨しながら市場拡大をする上で必要なステップである。実際の導入初期には、店員のトレーニングコストの増大や店頭での一時的な混乱も考えられる。だが、中長期的に見れば、FeliCa決済事業者、加盟店、利用者すべてのメリットになるはずだ。共通インフラ化が進み、FeliCa決済市場そのものの拡大が加速することに期待したい。
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