リビング+:レビュー 2003/05/27 19:10:00 更新

Review:ソニー「KLV-17WS1」
今、一番高画質指向のワイヤレステレビ「ワイヤレス液晶<ベガ>」

ワイヤレステレビとしては初めて無線部分にIEEE 802.11aを採用した製品がソニーから登場した。より高ビットレートでの映像伝送を実現しただけではなく、DVDクオリティを“あますところなく”再現できるワイドXGA/XGA液晶パネルを採用するなど、従来のワイヤレステレビから1歩進んだ高画質指向の製品となった

 家電メーカー各社が“次”の商材として参入しつつあるのが、ワイヤレス液晶テレビだ。従来のブラウン管を使用したテレビと比較して格段に軽量コンパクトな液晶テレビは、ワイヤレス化することで、そのメリットをさらに活かすことが可能になるからだ。

 「ワイヤレス液晶<ベガ>」(以下本製品)は、ソニーのAV製品として、初のワイヤレス液晶テレビといえる。同社はワイヤレス液晶テレビとしては既に3世代もの「airboard」を登場させているが、こちらはインターネット接続機能を持つなど、より手軽なIT機器という位置付けでもあり、画面サイズも12インチと完全にパーソナルサイズだ。これに対して、本製品は本来のテレビ以外の機能は持たず、複数人での視聴にも耐える17インチワイド/15インチがラインナップされるなど、純然たるAV機器となる(関連記事)。

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マニュアル等を除いたパッケージ一式。レシーバー部はワイヤレステレビとしては標準的なサイズだ。ディスプレイ部は今回試用した17インチモデルが黒、15インチモデルは白となる。なお中央に見えるAVマウスはオプション
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リモコンもチャンネル切換とボリュームに大きなボタンを割り付けた使い勝手重視のもの。ディスプレイ部のデザインに比べると、あまりに普通すぎる感はあるが

 機能的にはシンプルな反面、AV機器として重要な画質には力が入っている。本製品は「ワイヤレス」という部分を除けば、高画質液晶テレビである「液晶<ベガ>」とほぼ同一のコンポーネントを使用している。高精細なワイドXGA/XGAパネル、上下左右170度の広い視野角、500cdの高輝度、同社独自の高画質技術「ベガエンジン」などだ。

 やはり注目は、高精細な液晶パネルだろう。PC用ディスプレイに匹敵する解像度を持ち、ワイヤレステレビでここまで高精細な液晶パネルを採用した例はない。もちろんこれには理由があって、従来のワイヤレステレビが無線部分に利用していたIEEE 802.11bは実効伝送速度が最大でも5〜6Mbpsであり、MPEG2圧縮を用いてもXGAクラスの液晶パネルを活かすことができないからだ。

 そこで、本製品は無線部分に最大54Mbpsの通信速度を持つIEEE 802.11aを用いた。カタログ上の最大通信速度は24Mbpsとしているが、それでも実際の映像伝送に利用されるのは最大9Mbpsだ。これは802.11bを用いた製品の1.5〜2倍のビットレートとなり、DVDクオリティの映像を伝送できる。DVDビデオの最大ビットレートは9.8Mbpsであり、ほぼこれに匹敵するからだ。

 同じ最大54Mbpsならば、2.4GHz帯のIEEE 802.11gを利用することもできたのだろうが、本製品ではあえて5G帯の802.11aを採用している。もちろん、開発時期の問題もあったのかもしれないが、同社ではキッチンや、キッチンに隣接したリビングルームなどで利用しても電子レンジの影響を受けない点をメリットに挙げている。また、広く普及しているIEEE 802.11b無線LANの影響を避ける意味もあるだろう。実際、マンションなどでは隣接した世帯で利用している無線LANの影響も無視できない。

 もちろん、5GHz帯にはデメリットもある。周波数が(2.4GHz帯よりも)高いため、障害物を透過しにくく、電波の直進性が強いために電波が回り込みにくいのだ。そこで本製品では、内蔵のダイエレクトリックアンテナに加え、コンパクトな外部パラボラアンテナを付属している。伝送特性の異なるアンテナを併用することで、より広範囲の利用を可能にしたわけだ。

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付属の外部アンテナ。単に置いて使うことも、付属の金具で壁などに取り付けることもできる。金具は左右に可動するようになっており、アンテナの向きを水平方向に自由に変更できる。付属のケーブルも非常にフレキシブルだ

デザインと使いやすさを両立

 デザインや使い勝手にも注意が払われている。まず第一に評価したいのはACアダプタが不要な点。一緒に持ち運ぶのはACケーブルだけであり、片手で簡単に持ち運ぶことができる。持ち運び用のハンドルも最上部に位置しており、ハンドリングも良い。スタンドは、左右90度(180度)に画面の向きを変えることができる。

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上部にあるキャリングハンドル。ここには電源やチャンネルといった基本操作部があり、リモコンなしでも最低限の操作が可能になっている

 先行した「airboard」から継承されたのが「AVマウス」。“ワイヤレステレビならでは”の機能で、ワイヤレステレビのある場所でレシーバーの側にあるAV機器もリモコン操作できる。別売のAVマウスをレシーバー部に接続し、操作したいAV機器のリモコン受光部側に取り付けておくと、本製品の無線を経由してリモコン信号が伝わる仕組みだ。この機能の有無で使い勝手は大きく変わるだろう。

 背面には簡単に着脱できるカバーが装備された。このカバーを取り付けることで背面もフラッシュサフェース化され、非常にスマートだ。実際背面部のデザインはそれほど重要ではないと思うが、ソニーらしいコダワリといえるだろうし、いかにもAV機器的だ。

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カバーをするとこのように背面もフラッシュサフェース化される
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カバーを取ると背面中央の下部にAV入力と電源ケーブルのコネクタがある。カバーをするとちょうどスタンドの辺りからケーブルが露出し、前面からは目立たない(クリックで拡大)

 レシーバー部は、縦置きのコンパクトサイズ。1系統のAV入力(Sビデオ含む)とD1コンポーネント入力を備えている。「液晶<ベガ>」のD2/D4入力に比べるとダウングレードしていることになるが、この点はワイヤレス化による表示能力の低下を素直に反映したものだろう。

 おもしろいのは、AV出力がAV入力のスルー出力となっている点だ。例えば、リビングに設置する場合、これまでAV機器とテレビを接続していたケーブルをレシーバー部に接続し、スルー出力をテレビと接続するといった使い方ができる。AV機器側のAV出力に空きがなくても、簡単にワイヤレステレビをAVシステムに参加させることが可能になる。

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入出力は豊富という程ではなく、AV入力のスルー出力を持つなど既存のAVシステムに追加して利用するセカンドテレビとしての利用を想定しているようにも思える(クリックで拡大)

ワイヤレステレビとして1グレード上の高画質

 まずはディスプレイ部をレシーバー部を近い位置において地上波とDVDビデオの視聴を試してみた。電波状況が良好な場合のベストな画質を見るためだ。

 真っ先に気が付くのは、やはり従来のワイヤレステレビとはひと味違う精細感だ。地上波放送であれば小さめの文字のテロップもまったく潰れた感じを受けず、DVDの字幕も同様だ。ちょっと大き目のテロップなどもジャギーは見えない。今回視聴に利用したのは17インチだが、画面から1m程度離れて視聴するとワイヤレスであるという意識はなくなる。またDVDビデオでも、情報量が足りないという印象は受けなかった。

 トータルバランスも悪くない。黒は引き締まり発色も良い。今時のテレビらしい画質だ。PCディスプレイと比較すると少々派手気味だが、これは輝度が高いことや、テレビとして見栄えを良くみせるための意図的な味付けともいえる。明るい部屋での視聴ではこの位の方が見やすいだろう。もちろん、少々調整を行えばモニター的な画質にすることもできる。

 一方、ワイヤレス化のデメリットが全くないわけでもなさそうだ。画面に近づいてみると、背景部などに“いかにもMPEG圧縮的”なノイズっぽさはある。エッジ部にまとわりつくギラギラ感も皆無なわけではない。しかしこれらは過剰に近づいて視聴しなければ、まずわからないだろう。

 では、ワイヤード接続との比較はどうだろう。本機はディスプレイ部にもビデオ入力を持つので、こちらにダイレクトにDVDプレーヤーを接続してみた。ディスプレイに非常に近づいて見ると、ワイヤレス時よりすっきりとした印象を受けるが、1mも離れるとパッと見ではその違いがわからなくなる。それだけワイヤレス接続時の画質が優秀ということだろう。

IEEE 802.11aの伝送能力は?

 ワイヤレステレビとして次に気になるのは、やはり無線での伝送距離だ。本製品はIEEE 802.11aの採用により、最大通信速度こそ24Mbps(カタログ値、802.11a本来は最大54Mbps)まで高められているが、その分映像と音声の伝送に利用する通信速度も最大9Mbpsと高い。無線部分の高速化が全て伝送距離の余裕に回っているわけではない。

 さらに最大54MbpsのIEEE 802.11aやIEEE 802.11gは伝送距離に対する通信速度の低下が早く、5GHz帯のIEEE 802.11aは周波数が高いことから障害物にも弱い。従来のIEEE 802.11bとの違いは、メリットばかりではないのだ。

 今回は、編集部のあるビル1階の会議スペースを利用し、伝送能力をチェックした。2つの大き目の会議室と小さな会議室が複数配置されており、壁越しの利用をシミュレートするには都合が良い空間だ。

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B/C/D/Eの位置ではそれぞれ部屋の中央の位置で視聴を行った。D/Eはパーティションのみだが、B/Cは完全に仕切られた部屋であり、扉を開けた状態、閉じた状態での視聴を行っている

 レシーバー部は、Aのもっとも奥になる位置に置き、外部アンテナ利用時は2m程度の高さで廊下に向けて設置した。なお、本製品では受信レベルを1〜4の4段階(受信不能除く)で表示されるので、これを評価に利用している。

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ディスプレイでは受信状況を4段階のレベルで表示できる。今回はこれを指標に用いた
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まずまずの結果となった

 今回はIEEE 802.11b採用製品との直接比較はできなかったが、IEEE 802.11aを採用したことで不利になったとは思えない、というのが正直な感想だ。レシーバーのみでも2枚の壁をクリアしており(C扉閉)、C/Dで扉の開閉で受信レベルが明白に異なること、D/Eの位置でも問題なく受信できていることから、電波の回り込み具合もそれほど悪くないようだ。

 IEEE 802.11b採用のワイレヤステレビでは、概ね最大6Mbpsで映像と音声を伝送している。802.11bの実効通信速度自体が最大6〜7Mbpsとされているから、これはかなり目一杯の数字だ。

 これに対して、本製品では最大24Mbpsの通信速度で最大9Mbps。カタログ値の最大24Mbpsが実効通信速度なのか(IEEE 802.11aの実効通信速度は一般に最大25Mbps前後とされている)、規格上の理論値なのかはわからないが、どちらにしても映像+音声の両方で最大9Mbpsなら、無線の通信能力に対してかなり余裕がある。

 もちろん、IEEE 802.11aの方が伝送距離に応じて早く通信速度が低下するし、障害物にも弱い。しかし本製品ではこの点も考慮した上で、最大9Mbpsという伝送速度を選択したのだろう。ワイヤレステレビの高画質化のためにソニーの取った選択は、非常に適切だったといえるのではないだろうか。

すべてが高いレベルでバランス

 本製品は最新製品ということもあるが、ソニーらしく画質にもデザインにもこだわり、使い勝手を含めて非常にハイバランスな製品だ。このデザインが和室に向くかといわれると少し違うと思うが、現在のワイヤレス液晶テレビの購入層にはマッチしたものだろう。

 本製品に限ったことではないが、やはり不満は価格。ワイド17インチモデルは16万前後、15インチモデルは13万前後で販売されているが、同じ画面サイズのPC向けのテレビチューナー内蔵液晶ディスプレイ(無線は非搭載)が2台は買える値段だ。つまり、主に2カ所で使うだけなら、割安なディスプレイを2つ購入するという選択肢もある。持ち運びの手間を考えれば、こちらの方が魅力的と思う人もいるだろう。

 現状ではPC向け製品の方が販売量が多いといった点もあり、比較するのはあまり適切ではないかもしれない。だが、購入を検討するなら比べたくなるのも事実。画質のブレイクスルーの次は是非、価格のブレイクスルーにも挑戦してほしい。

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▼ニュースリリース(ソニー)

[坪山博貴,ITmedia]



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