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2003/11/21 23:59:00 更新 |
レポート
東京ガスのIT住宅を見てきました
TES床暖房やエアコンを携帯電話やパソコンから操作できる東京ガスの「ホッとねっとサービス」。既にマンションへの導入も決まり、来年4月のサービス開始が待たれる。東京ガス南千住テクノステーションのモデルルームを訪ね、その仕組みと今後の展開を聞いた。
携帯電話やパソコンを使い、自宅の風呂やTES床暖房を遠隔操作できる東京ガスの「ホッとねっとサービス」。来年4月のサービス開始に先駆け、今回は「東京ガス南千住テクノステーション」のモデルルームを訪ねた。最近は、家電メーカーなどが同様のサービスを相次いで発表しているが、同社のようにインフラを抱えた企業が参入すると普及にも弾みが付きそうだ。
「東京ガス南千住テクノステーション」のモデルルーム
ホッとねっとサービスは、各住戸のTESシステムを同社のセンターと結び、Webブラウザ付きの携帯電話やパソコンから給湯機や床暖房をリモート操作できるサービスだ。寒い夜でも、帰宅前に暖房機器のスイッチを入れておけば、自宅に着く頃には部屋は暖かく、湯船にはお湯が張られているという寸法。また、HA機能(JEM-A端子)付きの電気エアコンや照明などにも対応しており、状態を確認したうえでオン・オフできる。外出時に電化製品やガスの元栓が気になったら、携帯電話ですぐにチェックできる。
モデルルームは、マンションの一室を模したもので、リビングルームを中心にキッチンや風呂場が周囲を囲んでいる。TESシステムの床暖房やTESエアコン(暖房に温水を使うエアコン)はもちろん、HA対応の電気錠や電動シャッターなども用意されており、簡易的ながらセキュリティ用途も意識した構成といえる。
HA対応の電動シャッター
東京ガス、技術開発部新サービス開発プロジェクトグループの浅輪泰久主幹は、「もともと、ガスメーターはガス会社と通信を行っていたが、今回はTESシステムも双方向通信を行えるようにして、それを外部から利用できるようにしたことがポイント」と話している。通常、各世帯に備え付けられているガスメーターは、「中継器」からマンション共用部にある「集中伝送盤」に集約され、電話回線を介して東京ガスの「東京ガスステーション24」と通信を行っている。これは、ガス料金の自動検針や集中監視のためだ。
東京ガス、技術開発部新サービス開発プロジェクトグループ主幹の浅輪泰久氏
ホッとねっとサービスのシステム概要図。ガスメーターからステーションに至る部分は以前から利用されている(クリックで拡大)
現在、ガスメーターとセンター(東京ガスステーション24)の間は、大手ガス会社3社が20年ほど前に導入した独自の通信規格(通称:インテリジェント通信)を使ってデータをやり取りしている。インテリジェント通信は「通信速度は遅いが、信頼性は高い」規格で、機器のオン・オフ制御のほか、エラーコードや利用積算時間といった情報も伝送可能。東京ガスに電話するとガスメーターを停止(ガスを遮断)してくれるサービスがあるが、そうした集中管理機能もインテリジェント通信のおかげだ。また、伝送媒体となる電話回線にはNTT地域会社の「ノーリンギングトランク」(呼び出し音のない電話)を使用しており、必要なときだけダイヤルアップする仕組みになっている。
浅輪氏の言葉通り、ホッとねっとサービスは、これらレガシーともいえるネットワーク構成をそのまま利用する点が大きな特徴といえる。新たに開発した機器は、床暖房やエアコンなどの“熱源機”と中継器の仲立ちをする「ホッとねっとアダプタ」のみ。「アダプタを作り、床暖房やエアコンといったTES機器をつながるようにした。もともとある設備に追加するだけであり、開発期間は比較的短かったと思う」(浅輪氏)。
「ホッとねっとアダプタ」
ホッとねっとアダプタには、4系統のHAインタフェースが搭載されており、エアコンや電子錠、電動シャッターといったHA対応機器の操作が可能だ。HA(JEM-A)端子には、オン・オフの簡単な制御のほかスイッチの状態を伝える機能もあり、アダプタはこれらの情報をインテリジェント通信に変換する、いわば“メディアコンバーター”の役割を担う。
電動カーテンや間接照明はHA規格ではないが、これをHA信号で動かすためのアダプタも開発中だという。既に試作機は完成しており、デモでは実際に動かしていた
一方、センター側にはWebサーバを設置し、携帯電話やパソコンのブラウザで操作できる簡単なGUIを設けた。IDとパスワードでユーザー認証を行い、機器の一覧表示からプルダウンメニューで操作を選択する。遠隔操作が終了すると、あらかじめ登録したアドレスに機器の状況を記したメールが届く。
PCの操作画面。各機器の動作をプルダウンメニューで選択する。一番上にある「すべて止める」は外出時などに便利。「状態を確認」にすると、あらかじめ登録したアドレスに確認メールが届く
携帯電話の操作画面。携帯電話のキャリアは問わない
操作を終えると、やはり確認メールが届く
実際にパソコンから操作してみると、およそ30秒〜1分でモデルルーム内の機器がすべて作動した。実際には、外出中に操作するため、このタイムラグが問題になることはないだろう。なお、ユーザーは、一軒あたり10人まで登録可能だ。
IP化を急ぐ理由
もう一つの重要なサービスが「機器故障お知らせサービス」だ。前述の通り、TES機器は故障を検知するとインテリジェント通信を介してエラーコードを送信する。東京ガスステーションがエラーコードを受け取ると、利用者に通知するとともに、最寄りのメンテナンス店からサービスマンが急行するという仕掛けだ。
「エラーコードには故障箇所の情報も含まれているため、該当する部品を持っていけば迅速な対応が可能になるだろう。HA機器には、そこまでの機能はないが、機器からの応答がなくなるとアダプターが検知するため、利用者に通知することができる」(同氏)。
このほかにも、TES機器の運転状況確認機能を使って利用者側に使用量を通知できるサービスなども検討中という同社。さらに、ネットワークのIP化についても並行して研究を進めていく予定だという。
「まずセンターからアダプタまでのIP化を進める」。これにより、マンション内の集中伝送盤など付帯設備が省略され、コストダウンにつながる見通し。しかし、「その先(端末との通信)は、エコーネットなどさまざまな規格が登場していることもあり、検討を進めている段階だ」。
国内では、白物家電をネットワーク化する手段としてエコーネットが有力視されているが、その中でも媒体にBluetoothを使う東芝と、特定省電力無線にフォーカスした日立製作所&松下電器産業の2つに分裂した状態だ(記事参照)。一方、パナホームの「ハウスルーネット」や日立製作所の「生活サポートサービス」など、住宅メーカーや家電メーカーが相次いで同様のサービスを発表しており、時間的な余裕はない。
浅輪氏は「世の中の動きを見ながら判断するしかないが、できるだけ早くIPを進めたい。少なくとも、IPv6が主流になるまで待つことはないだろう」と話している。
ホッとねっとサービスの料金は1戸当たり月額1000円以下(予定)。当初は新築マンションのみを対象としているため、初期費用は分譲価格などに含まれる。採用第1号は、住友不動産が開発中の「港南四丁目超高層タワーマンション」(仮称、東京都港区)。なお、一戸建て住宅(建て売り対象)に向けたサービスについては、「2004年秋をめどに提供したい」としている。
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東京ガス
港南四丁目超高層タワーマンション
[芹澤隆徳,ITmedia]