直接の理由は、窒素酸化物(NOx)に対する厳しい排気ガス規制があったからだ。日米両国では少なくとも1960年代にはNOxと炭化水素(HC)由来の光化学スモッグの問題が多発し、この対策として厳しい規制が行われた。HCの低減はさほど難しくないが、NOxの低減は難しく、1976年(昭和51年)と1978年(昭和53年)の排ガス規制では、多くの日本車の動力性能が壊滅的に損なわれた。そのくらい難しかったのである。日本は1980年代に入るとこれを技術的にクリアした。
こうした歴史を背景に、京都議定書以降の世界のディーゼル排ガス規制を見渡してみると、NOx規制を重視する「日米派」と、CO2削減を重視する「欧州および欧州準拠派」の2つに分かれていた。
なぜならば、ディーゼルの排出ガス削減には2つのトレードオフ関係があるからだ。
つまり厳しいNOxの規制があると、CO2削減が難しい。日米は社会制度がそうなっていたのだ。裏を返すと、EUではNOxの削減が難しい社会制度になっているということでもある。
ということで不謹慎を承知で言えば、今回のフォルクスワーゲンの騒動は、京都議定書で日本がEUにやり込められたしっぺ返しの側面もある。ちなみにこのCO2利権は2008年のリーマンショックによる世界的景気減退で、需給がズルズルに緩み、特に日本では東日本大震災の影響から完全に無価値になっている。EUの目論見は敗北に終わったと思っていい。
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