「介護離職ゼロ」のために優先すべきは介護スタッフの待遇改善(2/4 ページ)

» 2015年11月12日 11時44分 公開
[日沖博道INSIGHT NOW!]
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 ではなぜ人は介護業界への就労をためらうのであろうか。実は若い人たちの中で介護職というのは人気のない仕事ではないのである。むしろ目の前にいる人のためになることができ、「やりがいを感じる」職業の一つなのである。しかしいざ実際の職業選択の場面になると、必ずしも選ばれないのである。当人がその気になっても、親兄弟が説得し断念させることも少なくないとされる。他の職業から転職を考えている人にとっても選択肢に残りにくいのである。

 なぜか。介護の仕事に「低賃金で重労働」とのイメージが強いことが主要因であろう。内閣府の「介護保険制度に関する世論調査」(平成22年)によると、ネガティブな面としては「夜勤などがあり、きつい仕事」(65.1%)、「給与水準が低い仕事」(54.3%)、「将来に不安がある仕事」(12.5%)の3つが高い割合を示した。

 この3つ目は、1つ目から来る「体力のある若いうちしかできない仕事」という不安と、2つ目からくる「将来になっても給与や待遇があまりよくならないのではないか」という不安を足したようなものではないかと推察できるので、根は先の2つと同じである。世間的に「介護職は離職率が高い」というイメージも作用していよう(実は全産業平均と比べて実際の離職率にそれほど差があるわけではない)。

 売り手市場になった今、わざわざそんな職場を選んでくれる奇特な人たち(そして選ばせる家族)は多くないということだろう。このイメージを変えないことには介護スタッフは全く不足したままであり、介護施設はなかなか増設できないのである。

 そして厄介なことに、そのイメージは必ずしも間違ってはいないのである。介護職員の平均給与が他の似たような職業に比べ割安なのは事実である。2015年11月7日の日経新聞の記事によると、福祉施設の介護員の月給は2014年の全国平均が常勤で21万9700円と、全産業平均の32万9600円より約11万円低いとある(厚労省の統計によるとのこと)。昨今増えている非正規雇用のスタッフであれば、さらに一段と安い給与で働くのが実態だ。

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