もちろん南海50000系の登場以前に、外観のカッコ良さを模索した車両もあった。旧型国電には半流線形という丸みを帯びた先頭車があったし、現在、交通博物館のターンテーブルに鎮座するEF55形も流線型を追求した。当時の最高速度では空気抵抗低減効果はなかったというから、カッコ良さを追求した。しかし、運用面ではカッコ良さを生かすために転車台で方向転換が必要で、これでは運用面で蒸気機関車から電気機関車に進化させた意味がない。外観デザインのチャレンジは長続きしなかった。
それに比べると南海電鉄50000系のカッコ良さは持続的だ。20年にわたって運用され、「機能を伴わないカッコ良さ」を認知させた功労者といえる。そして今、アニメ、航空会社、SF映画とのタイアップ実現という形で、南海電鉄に貢献している。それもこの形あればこそだ。20年前にこの形を提案した若林広幸氏と、それを決定した南海電鉄の英断だ。今でこそ鉄道車両デザインの外注化は増えているけれど、そのきっかけの1つだ。
南海電鉄によると、製造から20年経った今でも50000系の後継車種の開発予定はないという。事実、昨年12月からリニューアル工事が始まっている。南海電鉄広報部は「鉄道に関心をお持ちになる方が増えている中で、既にご乗車いただいている客さま、沿線にお住まいの方のほか、多くの方に当社のことを知っていただける手段」ととらえているという。「今後も機会があればラッピングトレインを検討していきたい」とコメントをいただいた。
南海電鉄が言うように、「鉄道に関心をお持ちになる方が増えている」は私も実感する。その「関心」のきっかけに「理屈のいらない、見て分かりやすいカッコ良さ」もあるだろう。それが鉄道の集客になるなら、外観のカッコ良さも機能の1つだ。
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