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» 2016年03月25日 10時30分 公開

宇宙ビジネスの新潮流:生命の痕跡を探せ! NASAで火星探査ロボット開発をリードする日本人 (2/2)

[石田真康(A.T. カーニー),ITmedia]
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ローバーのオートメーション機能を拡大する

 他方、基礎研究として携わっているのが、火星ローバーのオートメーション(自動化)の拡大です。現在、火星で活躍中のローバー「キュリオシティ」は遠隔操作がメインとなっていますが、火星軌道を周回しているオービター経由で地球と通信しているために1日1回しかコミュニケーションができません。こうなると1日に動ける範囲はせいぜい50〜60メートルにとどまってしまいます。これを拡大するのが自動走行機能の構築です。

 昨今オートメーションや人工知能という言葉がバズワードのように使われていますが、新技術というわけでなく、地道な研究が礎となった上で20年近く前から導入されてきており、徐々に進化してきた技術だと思います。例えば、ローバーの車輪のスリップがある一定以上になったら自動停止するなど、既に導入されている技術も多数存在します。他方で、自動化の導入に際しては、万が一、想定外の動きが起きたらどうするかなど保守的意見もあります。

 従って、特にNASAでは自動化技術の導入は「やらねばやらないものはやる」という形で進んできています。例えば、火星の軌道突入から着陸までは7分間しかありません。他方で火星から地球に電波が届くのには20分もかかってしまいます。従って、この7分間のシークエンス(一連の手順)は人間が遠隔操作や手動操作をするわけにはいかず、自動化せざるを得ないのです。

火星探査プロジェクトを担うローバーのイメージ(出典:NASA) 火星探査プロジェクトを担うローバーのイメージ(出典:NASA)

民間では取りきれないリスクを背負うのが国

 最近は宇宙ビジネスが盛り上がりを見せており、火星探査に関しても米SpaceXなど民間企業の動きもあります。他方で民間企業や投資家が取れるリスクには限度があります。そこで民間では技術的にリスクが大きすぎて投資できない分野、あるいはROIという概念が成立しない分野などを、国が積極的に行っていくべきと考えています。

 科学的分野はまさにそういった分野でしょう。他方で民間企業が推進するビジネス分野との間にもシナジーが生まれてくると思います。地球外生命体の探査に関しては、これまでにさまざまなことが行われており、今後20〜30年の間に生命の痕跡が発見されると信じています。これは1000年後、1万年後の教科書に載るような出来事です。JPLに入り3年半、まだまだ力不足を感じますし、もどかしいところもありますが、今は幸せに満ち溢れています。

 今回インタビューを通じて、小野さんの未来志向な姿勢やエネルギーに感銘を受けた。JPLのような世界最高峰の機関で、火星探査のような人類史上に残るプロジェクトに日本人がかかわっていることに誇りを感じるとともに、こうした日本人が次々と登場することを期待したい。

著者プロフィール

石田 真康(MASAYASU ISHIDA)

A.T. カーニー株式会社 プリンシパル

ハイテク・IT業界、自動車業界などを中心に、10年超のコンサルティング経験。東京大学工学部卒。内閣府 宇宙政策委員会 宇宙民生利用部会 委員。民間宇宙ビジネスカンファレンス「SPACETIDE2015」企画委員会代表。日本発の民間月面無人探査を目指すチーム「HAKUTO(ハクト)」のプロボノメンバー。主要メディアへの執筆のほか、講演・セミナー多数。

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