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» 2016年05月23日 08時00分 公開

燃費のウソとホントと詳細池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/5 ページ)

[池田直渡,ITmedia]

実燃費はなぜ発表値と異なるのか? エンジン編

 動力源の効率改善の話はやはりエンジンが主役だ。クルマという機械は、状況によって求められる能力が大きく変わる。例えば、7人乗りのミニバンであれば、一人乗りとフル乗車プラス人数分の荷物では重量が400キロ以上も異なる。平地をのんびり巡航しているときと、渋滞した観光地の山道をローギヤでゴー&ストップを繰り返すときではエンジンの稼働率がまるで違う。出力を必要とする場面では大きな出力が必要だが、いらないときにはそんな出力を生み出す仕掛け自体が邪魔になる。

ブレーキの主役はこのブレーキパッド。本来クリアランスはあまりなく、ローターのブレによって1回転の内ある程度の角度では常にローターと擦れて引きずっている ブレーキの主役はこのブレーキパッド。本来クリアランスはあまりなく、ローターのブレによって1回転の内ある程度の角度では常にローターと擦れて引きずっている

 要するに、低負荷で巡航するようなときは、大きなエンジンがいらない。最も大胆なのは可変気筒だ。力がいるときは4気筒。力がいらないときは2気筒に切り替える。エンジンの物理的排気量も半分になる。

 有効吸気量を減らす方法もある。昔のエンジンは空気の吸入量をスロットルバルブで調整してから、キャブレターやインジェクションを使って、ガソリンと空気を化学的な理想重量比である14.7:1になるように混ぜていた。スロットルバルブの主目的はエンジンの出力を調整することにある。実は、従来は必要悪としてあきらめてきたロスがここにあるのだ。スロットルバルブを絞ると口をすぼめて息を吸うのと同じで、全開時以外は常に大きな吸気抵抗が発生している。これをポンピングロスと呼ぶ。

 この抵抗をなくすため、スロットルバルブを常時全開にしてしまい、出力の調整はガソリンの供給量で行う。後で詳述するが、ガソリンの噴射量を変えながら空気を常時最大効率で吸い込むと比率が狂って不具合がある。だったら燃料に見合う分の空気を吸わせて、残りは酸素を含まない排ガスで増量してやればいいことに気が付いた。これをEGR(排気ガス再循環)と言う。燃焼に影響を与えるのは空気だけだから排気ガスは燃焼に関係ない。つまりエンジン出力の調整をスロットルバルブではなく、空気と排気ガスの混合比を変えることで実現するのだ。

プリウス用の2ZR-FXE型1.8リットルエンジン。指さしているのが排気ガスを吸気管に導くパイプ。大量EGRを実現するため、水冷式の冷却器が取り付けられている プリウス用の2ZR-FXE型1.8リットルエンジン。指さしているのが排気ガスを吸気管に導くパイプ。大量EGRを実現するため、水冷式の冷却器が取り付けられている

 なぜ排気ガスを混ぜるかと言えば、燃料に対して空気中の酸素が余ると、燃焼時の熱で空気中の酸素と窒素が化合して窒素酸化物(NOx)が発生するからだ。それでは排ガステストを通らない。酸素を含まない排気ガスを増量する分にはNOxの発生は起こらないので一件落着なのだ。ただし、EGRは排気を構わず吸気に混ぜると吸気温度が上がってしまう。すると吸気が熱膨張して吸気効率が落ちるし、ノッキングが起きやすくなって点火タイミングを遅らせることになり、効率が追求できない。だから排気ガスを一旦冷却してから吸気と混合するのだ。

 こうすると出力をコントロールしつつ、入り口を開放できるのでポンピングロスがなくなるのだ。吸気抵抗は全開以外の全ての領域でロスになっているので、改善幅としてはとても大きい。もちろん、エンジンをフル稼働させるときにはこの機構は全部オフになって、最大吸気量の空気を使って燃焼させるのだ。

 節電の話をするときによく出てくる待機電力の話を思い出してほしい。近年のクルマはいらないときにはコンセントを抜くように、さまざまな機構をストップさせているのだ。誰にでも分かり易い例を挙げれば、アイドリングストップのようなものだ。これまで述べたように、走行中にも同様の仕組みが多く作動している。

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