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» 2016年09月20日 06時30分 UPDATE

池田直渡「週刊モータージャーナル」:トヨタの“オカルト”チューニング (2/4)

[池田直渡,ITmedia]

静電気と空気の流れ

 さて、このステッカーが一体何なのかと言えば、ボディに帯電した静電気を空気中に逃がすものだという。「実は飛行機でも静電気のコントロールはやっています。翼の後ろにある針のような形状の部品があるのですが、そこから空中に放電しています」。調べて見るとこれを放電索と言うのだそうだ。

 エンジニアは風洞実験の動画を見せてくれた。気流の中に煙を流し、流れの中に置いた板を耐電させると、それまで板に沿ってキレイに流れていた煙が剥離を起こして板の表面から離れる。

前後バンパーの両サイド、合わせて4カ所に貼られるアルミテープ。切れ目が入って角を増やしている。本来は内側に貼る物だ。ただし86KOUKIではバンパーには採用されていない。写真のテープはノア/ボクシーのもので、部品としてディーラーで購入してもわずか540円 前後バンパーの両サイド、合わせて4カ所に貼られるアルミテープ。切れ目が入って角を増やしている。本来は内側に貼る物だ。ただし86KOUKIではバンパーには採用されていない。写真のテープはノア/ボクシーのもので、部品としてディーラーで購入してもわずか540円

 走行中のクルマはタイヤの摩擦やエンジン各部の摺動で発生した静電気の巣窟なのだそうだ。静止状態のクルマは場所によって100〜200Vの静電気を帯びている。これが走行中には450〜4500Vに跳ね上がる。クルマが帯びる電荷はプラスで、対して空気の方もプラス。だから反発して流れを剥がす方向にクーロン力が働くのだという。

 一応理屈はあるようだが、納得するまではいかない。クーロン力と言えば、クルマの世界では「厳密に言えばクーロン力も発生するが、微弱なのでこの場合無視する」という扱われ方がほとんどだ。その程度の力で本当にハンドリングに影響が出るものだろうか? エンジニアは「直進性能、ハンドリング性能と言った外乱安定性など繰安基本性能をバランス良く引き上げます」と言うが、そんな万能薬みたいな説明をされるといよいよ疑わしい。しかし困ったことに効果は体感してしまった。

 「納得できない」と言いつつ、いくつもの質問を重ねて得た説明はこういうことだ。これまでクルマを作ってくる中で、実物大のクレイモデルを使って煮詰めた空力性能が、いざ実車になってみると実験結果と全然合わないことがままあったのだそうだ。もちろん計測してみて、実車の寸法や形状がおかしいわけではない。いくら何でもこの時代に生産誤差がそんなにあるわけはない。

 いろいろと調べていくと、どうもこれは静電気のせいではないかという結論に達したのだという。例えば、ヘッドランプのオンオフで空力特性が変わったりする。もちろんリトラクタブルライトではない。外形に一切の変化を起こさない普通のヘッドランプだ。前述のタイヤ由来、エンジン由来以外に、電装品由来の静電気も影響が大きく、そこで静電気に目星をつけたらしい。実際、2000Vくらいの静電気が帯電すると、空力的に一生懸命突き詰めた部品形状が、ほとんど無意味になるほど空力性能を乱されるのだと言う。

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