テクノロジーが変える、クルマのカタチ 自動車業界最前線
特集
» 2016年09月26日 06時00分 公開

加谷珪一の“いま”が分かるビジネス塾:激変するタクシー業界 「初乗り410円」本当の狙いは? (4/4)

[加谷珪一,ITmedia]
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自動運転が普及すると無料タクシーも可能に?

 こうした時代においては、より多くの顧客層を獲得しておかなければ、タクシー会社が生き延びることは難しい。今回の料金引き下げはタクシー各社による顧客の囲い込みのスタートでもある。

 このような状況に拍車をかけるのが自動運転技術の急激な進歩である。米国の自動車メーカー、Ford Motorは8月17日、2021年までにハンドルやアクセルのない完全自動運転車の量産を始めると発表した。日本でも自動運転車が普及するのは時間の問題である。そのとき、タクシーはどのようなビジネスになっているのだろうか。

 自動運転技術とITのインフラが完全に結び付くと、場合によってはタクシーは無料でサービスを提供できるようになるかもしれない。

 自動運転車は手動運転車と比較してコストが高いと考えられるが、量産されれば1台当たりの値段は劇的に下がる。そうなってくると、人件費が掛からない無人タクシーのコスト競争力が一気に高まることになる。スマホなどのデバイスを使って個人情報を提供したり、動画広告の閲覧、アンケート記入などを行う代わりに、無料で自動運転タクシーを利用するというビジネスモデルが成立する可能性が出てくるのだ。

 つまり、タクシーは単なる移動手段ではなく、ITインフラをフル活用したマーケティングビジネスへと変わっていくのだ。

 この話は決して荒唐無稽ではない。東京のタクシー大手で今回の値下げを主導した1社でもある日本交通の川鍋一朗会長は、近い将来、自動運転車が確実に普及すると予測しており、無料タクシーの可能性についても言及している。同社は、今回の値下げをきっかけに一気に顧客を囲い込む戦略を描いている可能性が高い。

 ただ日本のタクシー業界には少々気になる点もある。こうした新しい技術への対応を着々と進める一方、Uberなど革新的な外資系企業の日本市場参入をロビー活動などを通じて妨害しているとも言われている。最終的にどのサービスが良いのかを決めるのは利用者であり、そのためにはより多くの選択肢が必要である。外資も含め、各社が公平にサービスを競う形で、タクシー業界が進化することを望みたい。

加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)

 仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。

 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。

 著書に「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。


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