「タフじゃなければコンビニ経営はできない。優しくなければコンビニを経営する資格がない」……だけど、タフであり続けることも、優しくあり続けることも、簡単ではない。
ほとんどの人が一度は利用したことがある「コンビニ」。ニュースやデータからコンビニで何が起きているのかを、推理して、調査して報告します。筆者は大手コンビニの元本部社員、元コンビニオーナー。コンビニの表と裏を見てきた者だけにしか書けないコラムはいかがですか?
最近のコンビニは、ひと昔前と比べて品ぞろえが豊富になった。スーパーなどの大型店舗との競争力を強化するために、棚を増やしてより多くの商品を取り扱うようになった。それでも品数で負けていることは否めない。そこでコンビニはどうしたのか。限られたスペースを「今、売れる商品」で埋めようと考えたのだ。
今回は、コンビニの品ぞろえがどのように決まるのかを紹介しよう。
必要なモノはほとんどそろっているコンビニだが、ずっと同じ品ぞろえではない。「今、はやっているモノ」や「新しいモノ」をいくつか置いて売れるかどうかを試した結果なのだ。
例えば、菓子やカップめんなどの棚は顔ぶれがコロコロ変わる激戦区だ。新商品を並べてみたものの、売れ行きが芳しくなければ次の入荷はない。競争の激しいカテゴリであると言える。
菓子やカップめんとは違い、品数を増やして棚のスペースを広げた商品がある。その1つが洗濯用品だ。1日に何十個も売れるモノではないが、あきらかにかつての状況とは違う品ぞろえになっている。
数年前まで、コンビニで売っている洗濯用品はコインランドリーで使う小分けの粉末タイプの洗剤だけだった。なぜかというと、コンビニで洗濯用洗剤を買う人のほとんどは独り暮らしで多くの量を必要としていなかったから。また、スーパーやドラッグストアが閉まっている時間にどうしても欲しいという人も対象にしていたので、何種類も置く必要がなかった。
ところが今は、どのコンビニでも洗濯用品のスペースにはさまざまな種類が置かれている。読者の中にもテレビのコマーシャルなどを見ていて気付いた人もいるかもしれないが、今や洗濯は「ただ汚れを落とすだけ」ではなく、「汚れを落とす+消臭・芳香」という身だしなみの一部に変わってきた。コンビニも時代の流れを受けて、それまで取り扱いのなかった消臭効果のある洗剤や香り付きの柔軟剤など、品ぞろえを増やすようになったのだ。
このほか、コンビニでの売り場で大きな変化があった商品と言えば「デザート」だ。筆者がコンビニのオーナーだったころ、デザートの棚はプリンが1段、ヨーグルトが2段、シュークリームなどの洋風デザートで1段というのが平均的な配分だった。
ところが、現在ではほとんどのチェーンでデザート専用の什器(じゅうき)を設置するようになった。「コンビニデザート=おいしい」という方程式を確立し、新たな売り場を自ら生み出したのだ。
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