打った施策に反応し、リアル書店とは異なった売れ筋ができるのも電子書籍の特徴だ。LINEマンガで16年最も売れた少女マンガは小学館の「BLACK BIRD」(小学館/桜小路かのこ)。06年に連載を開始し、12年に完結している。
「2万近いタイトルを配信している中で、完結作品や日の目が当たっていない作品も含めてどうやって“掘り起こし”をするかがデジタルコミックのテーマの1つ。紙は新刊依存度が高いが、デジタルはアーカイブビジネス」(小学館デジタル事業局の飯田剛弘氏)
集英社も同様に、完結したマンガの掘り起こしに成功している。紙の書店ではほとんどランキングに入ってこないが、電子ストアでの売れ行きがよい作品が生まれている。15年に完結した少女漫画「シックスハーフ」(集英社/池谷理香子)もその1つ。
「完結作品の掘り起こしに成功した。紙の売り上げのランキングとは違うランキングが作れているのは興味深い。LINEマンガの売り上げ伸長率は、毎年驚くほどの前年比を出していて、集英社全体では前年比127%。市場全体では122%程度なので、プレゼンスが高い」(集英社デジタル事業部の鈴木基氏)
リアル書店の売り上げ比率は、およそ30%以上が新刊で占められている。しかし電子書籍ストアでは、既刊の強さが特徴的だ。例えばLINEマンガでは、新刊12%/既刊88%となっているという。
完結作品や過去の作品が、キャンペーンや「1巻無料」、1日や1週間ごとに1話ずつ無料で配信する「無料連載」などの取り組みを通じて、スマホの読者にとって初めて出会う「新しい作品」と見られ、売り上げにつながっているのだ。「新刊をフックにして既刊に気づいてもらい、市場を伸ばしたい」(講談社の吉村氏)という思いはどの出版社も同じだ。
その一方で、リアル書店と電子ストアでの“連携”施策の例もある。
「押し出したい作品があった。そこで、リアル書店でのポップと同じようなイメージでバナーを作成し、電子ストアで展開した。ユーザーに『リアル書店でもスマホでも、なんだかこの作品をよく見るな』と認知してもらうことに成功し、電子の売り上げアップのみならず、紙も1巻2巻ともに重版――という結果に。こうした実績を少しずつ積み重ねて、大きな流れにしていきたい」(集英社の鈴木氏)
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