歴代ロードスターに乗って考える30年の変化池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/4 ページ)

» 2017年05月01日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

 最新型、NDロードスターには最後に乗った。NC型から乗り換えると、上着を脱いだように軽快だ。確かに接地感や盤石感はNC型に一歩譲る。だがNB、NCと失って来た軽快感がそこには確かにあった。

 マツダにはロードスターのための「ライトウェイトスポーツのパッケージ哲学」がある。

  • フロントミッドシップのFR方式
  • 軽量コンパクトなオープンボディ
  • 50:50の前後重量配分
  • 低ヨーイナーシャモーメント
  • アフォーダブル(手ごろな価格)

 これは歴代すべてのモデルが守った掟(おきて)である。筆者は最初にこの5カ条を見たときに、無駄のないライトウエイトスポーツの定義に深く感銘を受けたが、今、振り返ると1つ足りない。それは「いかなる速度でも楽しいこと」だろう。

初代以来初めてゼロから作り直したのが2005年に登場した3代目NC型。フォード傘下で再建中のマツダで行われたモデルチェンジは、経済的に厳しい中で行われた。現在でも最速のロードスターである 初代以来初めてゼロから作り直したのが2005年に登場した3代目NC型。フォード傘下で再建中のマツダで行われたモデルチェンジは、経済的に厳しい中で行われた。現在でも最速のロードスターである

 NA型からNB型はまさに正常進化であり、NC型ではそれをさらにブラッシュアップしている。では、そのままさらに性能向上を目指したとしたら、それはライトウェイトスポーツと呼べるものになっただろうか? 歴代ロードスターは丹念に性能の向上を図ってきた。数値化できる目標において、新しいモデルは常に前のモデルより優れていたが、最後の最後、「運転する楽しさ」という点については初代を凌駕(りょうが)することができなかった。マツダのエンジニアたちにとって、それがはっきりしたのは開発前の試乗会のことだった。

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