海外の富裕層が押しかける「診療所」をほとんどの日本人が知らない理由スピン経済の歩き方(5/5 ページ)

» 2017年05月23日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]
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堀医師が「異端の医師」でなくなる日

 ちょっと前、製薬会社が降圧剤の「効果」をうたうため、大学病院で行なわれた医師主導臨床研究のデータをいじった、いじらないと大騒ぎになったように、医療の世界では論文や学会での発表がすべてである。いくら目の前にいる患者のがんを小さくしても、「エビデンス」(科学的根拠)がなければ「たまたまでしょ」という扱いで、全国の医療機関に普及することがない。

 だからこそ、IGTクリニックに世界中から、治療を求める外国人がん患者や技術を覚えようという医師が集まっていることは、長い目で見ると日本のがん患者にとっても喜ばしいことなのだ。

 症例が積み重なることはもちろんだが、海外で医療情報が交換され、「堀学校」の卒業生が海の向こうで論文や学会発表をする。海外で認められれば、日本国内の医師たちも認めざるを得ない。そうなれば、ガイドラインでの評価も最低ランクの「D」から「C」(推奨するだけの根拠が明確ではない)くらいに上がる。それはつまり、全身化学療法、切除手術、放射線治療に続く「第4の選択肢」ができるということなので、がん治療で苦しむ人々の「可能性」が広がるというわけだ。

 堀医師が「異端の医師」でなくなる日もそう遠くないのかもしれない。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


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