「自分で目標の天井を作らない」――カルビーのヒット商品を支えるリーダー、網干氏の仕事哲学とは?【後編】ビジネス変革の担い手

業績好調なカルビー。そのビジネス成長をけん引するシリアル食品「フルグラ」の事業本部でリーダーとして活躍するのが網干弓子氏である。前編に続き、ビジネス成功に向けた彼女の仕事哲学に迫る。

» 2017年06月19日 10時00分 公開
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 成長著しい企業ビジネスの陰には優れたリーダーあり。ここ数年、好業績を続けている食品メーカー大手のカルビーも、こうしたリーダーたちの活躍がある。

 今や同社の看板商品となったシリアル食品「フルグラ」の事業本部で企画部 部長を務める網干弓子氏もその一人だ。前編では彼女の仕事に対する考え方や行動の骨格作りとなった工場勤務や「Jagabee」の商品ブランド立ち上げプロジェクトについて紹介した。

 今回の後編では、産休、育休を経て配属された現在のフルグラ事業本部において、彼女がいかにハードルの高い目標をクリアしてきたか、それを可能にした仕事哲学などをお伝えする。

天井を作らなければ風景は大きく変わる

 網干氏がフルグラ事業部に配属された理由の1つに、約20年前の発売以来、フルグラの売り上げが長らく低迷していて、いち早く立て直しが求められていたことがある。この状況を鑑み、Jagabeeで商品を“育てる”ことで手腕をふるった網干氏に、トップマネジメントは再建役として白羽の矢を立てたのである。

 結果を先に言えば、フルグラは2012年度から対前年比で毎年、約1.5倍の売り上げ増を継続。2016年度には約292億円の売り上げを達成した。売上目標も今では500億円に引き上げられたほど。フルグラは押しも押されもせぬカルビーの看板商品の1つになった。

 なぜフルグラはこれほどの急成長を遂げたのか。そこには「自分たちで天井を作らない」という網干氏の確固たるポリシーがあった。

カルビー フルグラ事業本部 企画部 部長の網干弓子氏 カルビー フルグラ事業本部 企画部 部長の網干弓子氏

 当時、フルグラはシリアル食品のカテゴリーの中で展開していたので、国内の市場規模である約250億円という数字が天井だと誰もが思っていた。一方で、朝食のカテゴリーとして考えたとき、その市場規模は17兆円に上る。「私が復帰した当時のフルグラの売上高は50億円前後で、目標は100億でした。これまでのようにシリアル食品市場で考えていたら実に高い目標でしたが、朝食市場の商品として発想を転換することで、一気に施策の幅は広がり、目標達成は現実味を帯びてきました」と網干氏は話す。

 加えて、網干氏が心掛けているのが、既成概念にとらわれず、自分の中でカベを作らないようにすることだ。冷たい牛乳をかけて食べることの多いシリアル食品は、従来、冬季に売り上げが落ちることが当然視されていた。だが、網干氏はこの論に疑問を持ち、検証のために2013年冬、ビジネス街の大型施設の屋外で、熱いコーヒーやスープと一緒にフルグラを提供する試食会を実施。結果は予想以上の反響を獲得し、提案次第で冬季にも食べてもらえることを確信する。「この結果から、冬季向けのレシピ開発にも力を入れるようになりました。その甲斐もあり、今では冬季の売り上げの落ち込みも格段に少なくなっています」と網干氏は力を込める。

 こうした発想は目標設定の場面においても生きてくる。経営トップからハードルの高い目標を与えられたときに、反論から入るのではなく、まずはできるための策を考える。「これも成功体験を積み余裕が生まれたからこそできるようになったことですかね」と網干氏。一見すると無理なことでも熟慮すれば解決の糸口は見つかるものだという。

 また、新商品の開発時など、判断が求められるあらゆる場面で、さまざまな意見をまずは飲み込み、あらゆる可能性を考える。そして、そのために現場主義を徹底する。網干氏は育児休養期間から復帰した現在、基本的には時間短縮(時短)で仕事をしている。その結果、以前と比べてより一般生活者としての視点が持てるようになり、これまで気付かなかったことにも目が行くようになった。例えば、スーパーで買い物をするとき、フルグラの成長のヒントがあるのではと、関係のない売り場まで見て回っているのだという。

部下に考えさせ、そして、他部署のメンバーと一緒に考え抜く

 網干氏は現在、プロジェクトの人的組織にも責任を負う。具体的な手法は、各部門に足しげく通い、フルグラに関心を持つ社員の輪を広げることで、その時々で適切な社員に協力を仰ぐというもの。共通理解を育むことに力を入れてきた経験はここでも大いに役立っているようだ。

フルグラ フルグラ

 メンバーのスキルを伸ばすためのサポートにも余念がない。各種イベントの運営を基本的にメンバーに任せているのも、社内では接する機会の乏しい消費者や社外の関係者の生の声を現場で体感させ、各メンバーの視野を広げることが狙いだ。

 その上で、網干流の部下育成術の“核心”と言えるのが、常に課題を与え、考えさせることである。

 「プロジェクトに問題は付き物。気付いたことがあり次第、メンバーに声を掛け、一緒に解決策を考えるようにしています。平均すると月に2〜3件ほどでしょうか。そこで良い案が生まれれば、メンバーの自信にもつながります。考えることをさぼっていれば、当然、叱責の対象ですが(笑)」

 難しい問題をまずは受け止め、全力で打開策を考える。メンバーに課題を与え続けることは、自身の経験に照らし合わせた、育成の近道との判断があるように見える。ともあれ、こうした日々の訓練で培われた“考える”土壌は、プロジェクトの土壇場で底力を生む原動力となっている。

 例えば、新製品の発売前に議論になるテーマが製造原価だ。特にフルグラは数多くの原材料を使うため、原価を抑えることが難しい商品である。そこでの網干氏の流儀は、ギリギリまで考え抜いた上で最後にはあえて無理を突き通すことだ。すると、現場もあらゆる知恵を絞ることで予算に何とか収まる原価が提示されるのだという。

 「もちろん、一方的な指示ではこうはいかないはずです。大切なのは、私自身の過去の苦労話なども話し、目標をチームとして共有すること。だからこそ、製造や営業など、あらゆる部門が土壇場まで粘ってくれます。私自身、過去にトラブルで苦しんだことで、その後うまく回るという方が多かった。この経験から、問題を前向きに捉え、打開策を見つけるようメンバーを鼓舞しています」

 網干氏とともに仕事をする機会の多い同社広報部の川瀬雅也氏は「課題を部下に振るだけでなく、自分も一緒にやるし、伝えるときは具体的に丁寧に説明している」と網干氏の人柄について語る。こうした対応により、部下も自分ごととして考えることができ、チームのモチベーションにもつながっているという。

 売り上げ拡大に向け、施策の確実性を上げることもリーダーとしての網干氏の重要なミッションである。ただ厄介なのが、確実性を高めるため時間をかけるほど、タイミングを逃しかねないことだ。そこで何よりもまずは考えながら施策をまとめ上げ、期待された成果が出なければ、二の矢三の矢を放つ。そのためにメンバー全員が共有した目的に対して知恵を絞り、アイデアを具体的な施策に継続的に落とし込んでいく。

 網干氏というリーダーに頼ることなく、考えることを植え付けられたチーム全員でさらなる事業拡大に挑戦し続ける。これこそがフルグラの成長に向けて、網干氏が築き上げた独自の方法論と言えるはずだ。

 また、女性の積極活用に向けた社会的な機運が高まる中、網干氏の活躍によって、近い将来、さまざまな企業でより多くの女性社員が生き生きと働く姿を目にできるようになるはずだと強く期待したい。

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