マクロミル創業者が再び起業した理由夏目幸明の「経営者伝」(2/3 ページ)

» 2017年08月16日 06時00分 公開
[夏目幸明ITmedia]

「antenna*」が目指すもの

 「データを集めてみると、時事、社会系のニュースではその人(読者)の興味関心を特定することが難しいと分かりました。例えば、大きな事件の場合、多くの人が関心を示します。そのニュースを見る人の地域や性別、年齢、関心領域に偏りは出ないのです。ところが、趣味、ライフスタイルに関する記事の場合、読者のログを取るとその人の関心領域がはっきり見えてくるんです」

 企業は広告のムダ打ちを嫌う。さまざまな消費者を年齢、性別、年収、居住地域、興味関心などによって分類し、できるだけピンポントに広告を打ちたいのが本音だ。

 不特定多数の人が興味を示す社会問題系のコンテンツではなく、趣味、ライフスタイルに関係する記事を集めたキュレーションアプリなら、読者がどんな人間で何にお金を使う可能性が高いのか、属性を分析しやすいと考えたのだ。

 そして、この続きが杉本氏らしい。彼はこのアプリによって、既存メディアの課題も解決しようと考えていた。

 「出版社や新聞社には編集能力があるクリエイターがたくさんいますが、雑誌や新聞の販売部数はどんどん減っています。収入が減れば優秀な人は集まりにくくなり、制作物のクオリティーは下がってしまうはずです。そこで、キュレーションアプリで骨太な記事を集めて読者を増やし、広告収入を出版社などの提供元に還元していければ、記事のクオリティー維持にも貢献できると考えました」

 既存メディアと競合になるのではなく、むしろ既存メディアが提供する質の高いコンテンツを守りたいというビジョンがある。こうして生まれたのが、アンテナだった。

 妄想に志が加わると「ビジョン」になる。徹底的に想像し、ビジョンを持ったら、その想像に落とし前をつけなければいけない。だから杉本氏は新たにグライダーアソシエイツを立ち上げたのだ。

photo グライダーアソシエイツの社員たち。ピンクの風船を持っているのが杉本氏

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