ワークライフバランスが、いっこうに進まない理由は3つ難しい(2/3 ページ)

» 2017年09月01日 11時46分 公開
[川口雅裕INSIGHT NOW!]
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ワークライフバランスの目的

 次に、ワークライフバランスの目的について考える必要がある。

 「育児や介護などに柔軟に対応できるようにする」とは、すなわち、「特別の救済措置を施さなくても、育児や介護に時間がさけるような状態にしてあげる」ということだ。しかしそれでは、依然として「家事や育児を気にせず、フルタイムで働ける男性の働きぶりが本来であり、職場の主役である」と認めているのと同じである。つまり、長時間労働の削減をうたいながら、長時間労働を辞さずという昔ながらの働きぶりを正当化するという自己矛盾が生じてしまっている。

 ワークライフバランスは、育児や家事に携わる女性や親の介護が必要になった人達というより、むしろ中高年男性にとって重要だ。仕事場や仕事上の付き合いとは無関係な環境に身を置けば、多様な価値観や視点や知識を得ることができるし、自分が身につけてきた能力やノウハウを相対化・客観視できる。社内や業界の慣習に染まってきた自分の改善すべき点や新たな可能性に気付ける。損得勘定を考えなくて良い付き合いは、リラックスできる。飼われているように職場に閉じ込められているよりは、世界が広がり、モチベーションが上がり、アイデアも出やすくなるから仕事にも好影響があるだろう。

 ワークライフバランスの目的は、「働く人を会社という閉じた空間から解放することで、保有する多様な能力を開花させ、それが仕事に効果的にフィードバックされること」と考えるべきだ。顧客の多様性に柔軟に対応する能力を身につけるための手段がワークラーフバランスなのであり、だからこそ、企業はワークライフバランスを推進する必要があり、その能力にもっとも欠けているのが、これまで職場に閉じ込められてきた中高年男性なのである。

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