低収益性を海外展開で補えるか 「QBハウス」親会社の決算「NOKIZAL」決算ピックアップ

» 2017年10月06日 06時00分 公開
[NOKIZALITmedia]

 ヘアカット専門店を展開するキュービーネットホールディングス(東京都渋谷区)が9月29日、官報に掲載した2017年6月期(16年7月〜17年6月)決算公告によると、売上高は3億1000万円(前期は140億5000万円)、経常利益は2900万円(前期は3億円)、累積の利益や損失の指標となる利益剰余金はマイナス11億2700万円(前期はマイナス11億4700万円)だった。

※2016年7月より同社は持株会社に移行しているため、売上高などは参考数値。

photo キュービーネットホールディングスのWebサイト
photo キュービーネットホールディングスの決算公告=官報より

 キュービーネットホールディングスは1995年の設立。1000円(税別)10分でヘアカットを行う「QBハウス」を国内515店舗、海外108店舗で展開しており、合計年間来店数は1800万人を超える。なお、社名の「QB」はアメフトの「クォーターバック」に、「ネット」は創業者の小西國義氏がインターネットの時代の到来を予想して付けたことに由来する。

 2006年にオリックスが発行済株式の73%を30億円で取得し、筆頭株主となったが、2010年にジャフコに100億円で売却、更に2014年にアパマンショップやスカイマークへの投資で知られる投資ファンド、インテグラルがジャフコから同じく100億円程度で買収している。

ここがポイント

 早くからデフレ時代の注目株として、株式公開を期待されていた「QBハウス」ですが、株主の変遷を見ても分かる通り、中々実現できていません。今年は持ち株会社体制に移行したので少し数字が見えづらいですが、売上高自体は前年の140億円から、今年も店舗・来店数とも伸びているのでおそらく150億円程度になっていると思われ、上場していても全くおかしくない規模といえます。

 にもかかわらず、現状出来ていない理由としてはやはり収益性の問題が挙げられそうです。経常利益が前年3億円、今年0.3億円というのは売上高の大きさを考えると、ネットビジネスと違って固定費がかさむサービス業とはいえ、ちょっと辛いところです。また、17年6月期は整理したのか少し軽くみえますが、前期決算では固定資産と固定負債も100億円を超えていたので、投資効率的にも良いとは言えなそうです。

 ビジネスのセオリー通りなら、まずは客単価を上げる戦略をとりたいところですが、それは強みである低価格・短時間とトレードオフになりかねず、単純には難しそうです。ならば、さらに薄利多売を重ねて規模の経済を追うという戦略が考えられますが、既に国内の来店者数は1500万人を突破しており、まだ伸びているとはいえ、飽和感は否めません。そこで、積極的に取っていきたいのが海外ということになります。

 既に、台湾、香港、シンガポールに100店舗以上を展開し、海外来客者数も300万人に迫っている「QBハウス」、2017年にはニューヨークにも進出しました。当然、国内が飽和なので海外にと言ってもそんなに甘い話ではなく、試行錯誤を重ねているようですが、この10年で10倍に伸ばしています。

 ちなみに、「QBハウス」には、今ほど有名でない頃、テナント申請をしても商業施設側が、他の小売店舗が敬遠する場所(トイレ近くなど)しか空けてくれず、集客力に目をつぶって入居したところ、当初の想定以上の集客が実現、これ以降、QBと商業施設側の利害が一致して出店が加速していったという面白いエピソードがあります。こうした泥臭くて面白いエピソードを重ねながら、日本発のビジネスモデルで世界を獲ってほしいですね。

キュービーネットホールディングスの過去の業績や企業情報は「NOKIZAL」で確認できます

photo

《サービス紹介》

NOKIZAL」は就活生から社会人まで、無料・登録不要で使える日本最大級の企業情報活用アプリです。4万社以上の業績情報に加え、メールやカレンダー、各企業や関連情報サービスへの外部連携も充実しており、企業情報収集をサポートします。帝国データバンクが保有する100万社以上の企業調査情報も追加利用可能です。

《著者紹介》

平野健児。新卒でWeb広告営業を経験後、Webを中心とした新規事業の立ち上げ請負業務で独立。WebサイトM&Aの「SiteStock」や無料家計簿アプリ「ReceReco」など多数の新規事業の立ち上げ、運営に携わる。現在は株式会社Plainworksを創業し「NOKIZAL」を運営中。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.