JALのチャットボット「マカナちゃん」に学ぶ、AI活用の“肌感覚”「小さく始めて大きく育てる」(1/2 ページ)

» 2017年10月30日 13時03分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

 AI(人工知能)が目覚ましく発達し、既存のビジネスを大きく変えることが期待されている。だが、実際にAIのどのような点が優れているのか、業務上のどのような課題を解決できるのかといった具体的なメリットが分からないとの声も多い。

 また、現場側がAIを使ったビジネスを提案した場合でも、経営側から「どんな利益が得られるのか」「ビジネスがどう発展するのか」などの疑問を呈され、実務への導入に至らないケースもあるという。

 こうした状況下で、企業はどうすればAIを効率よく実務に導入し、既存のビジネスを変革できるのだろうか――。ソフトバンクと日本アイ・ビー・エム(IBM)が共催したイベント「AI Business Forum」内のセッション「JAL×IBMで描くBtoCコグニティブ戦略 Watsonで実現する新しい旅の提案へ」を取材した。

photo チャットボットサービス「マカナちゃん」のイメージ

「まずやってみること」が肝心

 日本IBMのコグニティブ・システム「Watson」を活用したチャットボットサービス「マカナちゃん」を開発・提供し、顧客満足度の向上に成功した日本航空(JAL) Web販売部の岡本昂之主任によると、「AI導入のコツは『まずやってみること』と『小さく始めて、大きく育てること』の2点」という。

 「世間では『AIを活用することを目的にビジネスをしてはいけない』『目的を実現するものがテクノロジーだ』という指摘をよく耳にするが、私はAIを活用することを目的に新規事業を始めても問題ないと考えている」(岡本主任、以下同)という。

 岡本主任が手掛けるのは、Webサイトでの航空券のマーケティング。Webサイトのユーザビリティ向上や効率の良い顧客獲得策を立案するのが業務上のミッションだ。

photo JALの岡本主任

 近年のトレンドを踏まえ、岡本主任もAIを活用して業務を効率化したいと考えた。ただ、AIに対する漠然とした知識はあっても、その具体的な活用法は分からなかったという。

 「AIに何ができて何ができないのかといった“肌感覚”が曖昧だった。だが、まずは自分で体験してみないと何も始まらない。幸いにもJALはチャレンジを受け入れてくれる環境が整っていたので、『まずやってみよう』と、AIに対する高いリテラシーを持たないまま日本IBMとWatson導入に向けたミーティングを設けた」

 「ミーティングの結果、まずは実証実験と割り切り、Watsonがどう学び、どう動くのかを知ることで自分たちのリテラシーを向上させることにした。ただ、AIに大量のデータを学習させ、全ての顧客に有用なサービスを生み出す――といった大きな目標を掲げると、膨大な資金と情報が必要になり、実現が難しいと考えた」

 そこで、Watson導入のテーマを「B2C(消費者向け)サービスへのAI活用」に限定し、「顧客とのタッチポイントにAIを導入した場合、ビジネスにどんな影響があるのかを知る」という明確な目的を設けた。

 「サービスは段階を追って発展させる方針を採用した。第1弾は投資額を最少に抑えて対象範囲をできる限り絞り、結果を踏まえて第2弾以降で大きく育てることにした」

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