JASRAC、外国映画の使用料を段階的引き上げへ 最大2%定額制から興行規模に応じた料率へ

» 2017年11月08日 20時10分 公開
[青柳美帆子ITmedia]

 日本音楽著作権協会(JASRAC)は11月8日、外国映画の上映に関する音楽著作物の使用料の引き上げを目指すと発表した。現在の定額制から、興行規模に応じた使用料規定への変更を予定する。映画上映使用料の全面的な見直しは規約制定以来初。

 現在の映画上映使用料は、全国興行生活衛生同業組合連合会(全興連)との契約に基づき決められている。外国映画の使用料は、映画の興行収入、公開館数、上映数に関係なく、映画1作品当たり一律18万円程度の定額制。欧州諸国では興行収入や入場者に応じ、1〜2%の料率を定めているため、内外格差が生じている状態という。

JASRACの大橋健三常務理事

 「日本の映画産業は、米国と中国に次ぐ世界第3位。しかし映画上映使用料は欧州諸国と比較して著しく安価。以前からJASRACに、外国の著作権管理団体やメンバーから是正を求める声をいただいていた。また、外国映画に音楽を提供する日本の著作者も懸念している。内外の著作権者の期待に応えられるように努力していく。皆さまにおいては著作権に関して世界と日本の実情についてご理解をいただきたい」(大橋健三JASRAC常務理事)

 JASRACは6年以上にわたり、全興連との協議を進めていた。「まだ双方の意見に開きはある」(大橋理事)というが、年度内には一定の方向性についての合意を目指し、2018年度にも興行規模に沿った形式への変更をもくろむ。

 「すぐに欧米諸国並みに引き上げるわけではない。現状の18万円という額を考慮すると、いきなり引き上げるのは難しいことも分かっている。自ずと段階を踏んでいく必要がある。スタート時の水準は、今後協議の中で決めていく」(大橋理事)

 新しい制度では、平均入場者や平均料金、音楽の占有率やJASRAC管理楽曲の多寡なども含め、2%を上限として料率を決定する構えだ。従来通り全興連を通して配給会社が支払いをする場合と、映画館が直接支払いをする場合、2通りの使用料徴収の形態ができるという。大手の配給会社や、単館系の映画館への影響は大きいとみられる。

 映画を見る一般客への影響はあるだろうか。この使用料の引き上げがチケット代の値上げにつながるか――という質問に対し、浅石道夫JASRAC理事長は「普通に考えれば起こらないことだと思っている」とコメントした。

浅石道夫理事長

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