地域医療構想を3つのキーワードで読み解く都道府県はどこへ向かう(5/6 ページ)

» 2017年12月06日 09時00分 公開
[三原岳ニッセイ基礎研究所]
ニッセイ基礎研究所

地元医師会との協調・連携

 次に、地元医師会との連携という点で都道府県のスタンスを検証してみよう。都道府県が切れ目のない提供体制の構築を図ろうとする際、最初に配慮するのは地元医師会と思われる。先に触れた通り、日本の医療提供体制は民間中心であり、都道府県が構想を策定するだけでは実効性を持たず、現場で医療サービスの提供を担う地域の医師会との連携が欠かせない。

 そこで、地域医療構想の策定プロセスに地元の医師会がどこまで参加していたか検証した。具体的には、(1)各都道府県の地域医療構想に出ている文言や資料、Webサイト(※12)に掲載された議事録などを通じて、「実質的な検討の場」を設定(※13)、(2)地域医療構想に限らず、医師会関係者は地域の医療政策に関する検討の場に必ず参加しているケースが多いことを考慮し、委員枠として確保されているかどうかではなく、医師会関係者が検討の場のトップに就いているかどうかを検証――といったプロセスを通じて、都道府県と各地域の医師会がどこまで共同歩調を取っていたかどうかを考察した。

 さらに、(a)地域医療構想に掲載されている委員名簿、(b)名簿が掲載されていたとしても、トップが判別できない場合は議事録、(c)委員名簿が掲載されていない場合はWebサイトの資料または議事録――をそれぞれ集計した。

 その結果、検討の場のトップの氏名や所属先、肩書などが判明しなかった15府県(※14)を除く32都道府県のうち、24都道県で医師会関係者がトップを務めていた(※15)。以上を踏まえると、切れ目のない提供体制の構築に向け、地元医師会と連携・協力を図ろうとする都道府県が多かったことを指摘できる。

※12 17年3月31日現在のデータ。以下、同じ。

※13 都道府県全域をカバーする専門的な検討組織(例:専門部会)を医療審議会の下に置いている場合、これを検討の場と見なし、その開催頻度が少ない場合、構想区域単位の会議を検討の場と位置付けた。

※14 検討の場の議論に用いた資料や議事録の公表が不十分だったため、把握できなかった。

※15 8つの構想区域のうち5構想区域で医師会関係者がトップだった秋田県も含む。

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