日本初の宇宙ビジネスコンテスト、大賞に輝いた女性の思いとは?宇宙ビジネスの新潮流(2/3 ページ)

» 2017年12月08日 06時30分 公開

ドップラーライダーを搭載した超低軌道衛星システム

 ファイナリストに選出された後に、メンターの方々やJAXAの方々と議論を重ねてまとめたのが「超低高度衛星搭載ドップラーライダーによる飛行経路・高度最適化システム構築」です。ドップラーライダー(※レーザ光を発射して、大気中のエアロゾル――塵や微粒子からの反射光を受信し、その移動速度や方向を風速・風向として観測)自体は既に地上で活用されていたのを知っていたので、それを上空から使えないかと考えました。

 衛星自体を低軌道に浮かべることでドップラーライダーを小型にすることができます。そしてその上空の衛星から3次元の直観測風のデータを取得、それを予測風に活用して、飛行経路・高度の算定モデルに動的に組み入れることができればと考えました。試算にはなりますが、もし世界全体で日々飛んでいるすべての飛行機で燃料を1%削減することができれば、航空業界全体で年間3200億円の燃料費削減が可能になります。

(画像提供:松本紋子さん) (画像提供:松本紋子さん)

 また、精度の高い風の情報が分かることで、事前にシートベルトサインをつけたり、あるいはその空域を避けることで安全を確保したり、到着時間の予測精度が高くなったりと、航空会社だけでなく、ご利用いただくお客さまにとってもメリットを提供できるのです。

 ドップラーライダーを搭載した衛星打ち上げは日本では今のところ未定ですが、18年1月にはESA(欧州宇宙機関)が高度350キロメートルの低軌道に打ち上げることが計画されています。当面はこうしたデータを活用して、さまざまなシミュレーションを行い、実証実験を実施して、将来運用体制を構築できればと思います。

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