日銀ETF購入の「出口」、市場が描く5つのシナリオ軟着陸できるか(2/4 ページ)

» 2018年01月26日 06時00分 公開
[ロイター]

2.保有株を市場で売却

テーパリングの次のステップは、保有株の売却だ。ETFは株式であり、国債と異なって満期(償還)がない。売らない限り日銀のバランスシートに残り続ける。株価が下落すれば、含み損を抱える恐れもあり、財務の健全性や国民負担を考慮すれば、早く売却するに越したことはない。

ニッセイ基礎研究所・チーフ株式ストラテジスト、井出真吾氏の推計によると、昨年12月末時点で、日銀ETFの損益分岐点は日経平均で1万6678円。同日の終値2万2765円から26.7%下落すれば、含み損に転ずる計算だ。

しかし、市場への売却は容易ではない。日銀のETF保有額は1月20日時点で簿価17兆円(自己資本は8兆円)。昨年9月末の評価益は4兆円だった。仮に10年かけて簿価で売却したとしても、年間1.7兆円になる。2017年の現物株でみれば、生損保と都銀・地銀を合計した売り越し額1.4兆円を上回る。

バブル的に相場が過熱した局面であれば、保有株売却は「むしろバブルを抑制する効果が期待できる」(国内投信)との声もある。しかし「バブル崩壊の引き金を引きかねない」(別の国内証券)と警戒する声も強い。

実は、日銀はすでに株式を売却している。日銀が2002年11月から04年9月と、09年2月から10年4月の2回、買い入れた金融機関保有株式だ。2016年4月から年間3000億円の市中売却を再開している。

しかし、日銀は株式売却の一方で、設備投資などに積極的な企業に連動するETFを組成し、年間3000億円買う方針を15年12月の金融政策決定会合で決定した。相場へのインパクトに配慮したためだが、市場では「銘柄入れ替えにすぎず、出口戦略などとは到底いえない」(別の国内証券)との声も出る。

この件をみてもわかるように、保有株の売却のハードルはかなり高い。そのときの経済・市場の状況に左右される上、市場や財界からの抵抗圧力も強くなりそうだ。

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