日銀ETF購入の「出口」、市場が描く5つのシナリオ軟着陸できるか(3/4 ページ)

» 2018年01月26日 06時00分 公開
[ロイター]

3.GPIFなど特定投資家を受け皿に

特定の投資家に、相対でETFを売却するシナリオもある。市場を経由しないことから、直接的な売りインパクトは出ない。

「日本株の将来的な値上がりが見込めるなら、海外のファンドなどが買う可能性はゼロではないだろう」(国内投信)とされる。ただ、日銀の保有額の受け皿になれるほど多くの買い手が現れるかは不透明だ。

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に買い取りを求める方法もある。9月末時点で、GPIFの日本株の構成比率は24.3%。基本ポートフォリオでの日本株式の割り当て25%に接近しているが、上下に許容乖離(かいり)幅を9%設けており、全く余裕がないわけではない。

国家公務員共済組合連合会、地方公務員共済組合連合会、日本私立学校振興・共済事業団の「3共済」も基本ポートフォリオ上の株式の比率は概ね25%前後で、GPIFを合わせた4者の「のりしろ」部分を含めると、余力は約19.5兆円に達する。

ただ、日銀のリスクが年金に移転することに国民の理解が得られるかは不透明で「政治的な可能性を考えると、現実味は乏しい」(国内シンクタンク)との声も出ている。

4.企業が自社株買い

日銀保有のETFを個別株にばらして、各企業に自株買いを実行してもらうシナリオもある。企業は自社株買い用の資金を使うことになるので、市場から買う自社株買いが減り相場にはネガティブな影響が出るとの見方もあるが、このシナリオの支持派は、潤沢な内部留保を使って今以上に自社株買いをしてもらえばいいと指摘する。

その背景には、米国企業に比べて還元率が低い、日本企業の自社株買いの状況がある。野村証券・リサーチアナリスト、西山賢吾氏によると、米企業は総利益を上回る100%以上の総還元率を続けており、そのうち自社株買いが3分の2を占める。一方、日本企業の総還元率は利益の4割程度で自社株買いは4分の1程度だ。

いちよしアセットマネジメントの上席執行役員、秋野充成氏は「日銀が日本企業の自社株買いを代行していたと捉えることができる」と指摘。個別企業が日銀から買い入れれば、相場にも悪影響が出ないで済むと話す。

もっとも、対象企業の財務面での余裕はまちまち。ETFの対象は優良企業とみられる東証1部企業(TOPIX)とはいえ、すべての企業が日銀からの自社株買いに応じられるかは不透明だ。

売却の値段をどうするかも問題となる。時価で買ってくれればいいが、自社株買いは企業が自社の株価が低いとみたときに買うのが基本。日銀が買った時点の簿価であっても、企業が安いと判断するかはわからない。

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