テスラの自動運転は本当に“使える”のか?(3/4 ページ)

» 2018年02月23日 15時46分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 特に高速道路において、オートパイロットの安定感、安心感は抜群だった。白線を踏んでしまったり、コーナーで怖い思いをしたり、といったことも400km超のドライブで一度もなかった。唯一、オートステアリングから制御を奪おうとしてグイとステアリングを回したら、急ハンドルになってしまってそれでヒヤリとしたということだけだろうか。

渋滞した高速道路で自動運転中。中央の車両アイコンは、現在のレーンのどこを走っているかがリアルタイムで表示されている。左右に寄るとそれが表示される。右後ろ方向に扇状の表示があるが、これは右後方にセンサーが何かを感知したことを表している。おそらく自動車が来ているのだろう。前方の走行車を常に認識して、車間距離を保つようにブレーキとアクセルを自動操作してくれる

 さらに、高速道路をオートパイロット中にウインカーを出すと、自動で車線変更してくれる。なかなかにスムーズで、前車が詰まってきたな、と思ったらウィンカーを出せば追い越し車線へ移動して加速してくれる。おそらくセンサーが前後左右を見て、危険だと思ったら車線変更はしないのだろうけど、それを試してみるのはさすがに怖くてできなかった。でも、もしかしたら人間がサイドミラーを見て確認するよりも、センサーでチェックしているオートパイロットのほうが、死角もなくて安全なのかもしれない。

オートパイロットで気になったこと、あれこれ

 わずか数日だが、オートパイロットは運転の概念を変えるな、と感じるのに十分だった。最後の100kmくらいは、もうTeslaに運転をほぼおまかせしきりで、僕自身は軽くハンドルを握っているだけ。前車をしっかり見てハンドルを調節して、という行為がいらないから、注意力を使わず疲労が圧倒的に少ない。普段長距離を運転すると、すごく眠くなるのだが、今回は全く眠くならなかった。これは目新しさもあったのかもしれないけど、疲労が抑制されていたというのが大きいように思う。

 それでもいくつか注意点もある。

 1つは、赤信号を認識しないこと。なので、単独で走っていて、赤信号に遭遇すると勝手には止まってくれない。一般道でオートパイロットをオンにすると、意外にこれが厄介だ。自分で運転しているときは、前に車が一台もいないほうが安心して気持ちよく走れるのだが、オートパイロットの場合は先行車がいたほうが安心できる。

 ちなみに、オートパイロットとナビは連動しておらず、交差点を勝手に曲がってくれたり、分岐を自動で選んでくれたりするわけではないので、そこも注意。真っ直ぐな道なら勝手に連れて行ってくれるけど、分かれ道があったら、ナビを見ながら人間が判断して操作する必要がある。

ある程度空いている高速道路での自動運転。スピードメーターの左に設定速度、その下に車が認識している法定速度が表示されている。スピードメーターの右側にあるステアリングマークが点灯すると、オートステアリングが可能になる

 以前、テスラジャパンの方と話したときに、「100円ショップの看板があると、制限速度100km/hと誤認識してスピードが100km/hまで上がってしまうことがあるんですよ」と冗談交じりに言っていたことがあったが、今回のドライブではそんなことは全くなかった。ソフトウェアが無線経由で常に更新されているということもあり、日々精度が向上しているのだろうと思う。

 オートパイロットがあまりに信頼性があるので、ついドライバーが注意不十分になってしまうのも問題だ。僕は、普段なら運転中に助手席の人の顔を見るのも躊躇(ちゅうちょ)するくらいなのだが、Teslaの場合、ドリンクを手に取ろうと目視で場所を確認してしまったことがあった。そのくらい安心感があるといえばあるのだが、仕組み的にはいつ人間に制御を戻されるか分からない機能であり、どんなスタンスで運転したらいいのか悩む。

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