さて、そういうトヨタのモノづくりの話をするにあたって、河合副社長が決算でレクチャーしたテーマは「トヨタの競争力を支えるモノづくり」だ。前述の通り、トヨタ生産方式の全貌はとてもではないが決算発表で話せる規模ではないので、テーマは絞り込まれている。そのテーマは自働化についてである。
生産ラインで稼働するロボットは据え付けられた途端にどんどんクルマが作れるかと言うとそういうものではない。作業の手順をいちいち教えなくてはならない。第1に技術――つまり技である。
下図を見てもらうのが一番早い。ある実験でロボットに文字を書く作業を教え込んだ。上は書道未経験者が教えた場合。下は書道経験者が教えた場合。結果は歴然だ。ロボットは勝手にやり方を身に付けられない。しかし、教えてやれば1度で覚えて何百万回でも同じクオリティで再現できる。ロボットがより良い製品を作るためには、より良い手本を示せる人(匠)の存在が欠かせない。
もちろんすべての動作に無駄があってはならない。0.1秒でも無駄な動作を教えてしまえば、ロボットはそれを延々と繰り返し、途中で自動修正できない。無駄を極限まで減らし、かつ高いクオリティの製品を生み出す完成された匠の技があってこそのロボットなのだ。
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