韓国Samsungの「誤算」 高級TVでソニーやLGに後塵有機ELテレビ撤退が……(3/4 ページ)

» 2018年05月16日 06時00分 公開
[ロイター]

<製造効率化が進行>

サムスン電子が、テレビ事業をLCD技術ベースにすると決定した背景には、現在は機能停止しているサムスングループ未来戦略室の提言がある、と事情に詳しい関係者は語る。

「未来戦略室は、実績の乏しい有機ELに移行するよりも、LCDに注力する方が収益性が向上すると提案していた」と同関係者は、匿名を条件にロイターに語った。

つまり、テレビ事業は収益性低下に苦しんでおり、サムスンとしては、高コストの有機ELよりLCD技術の方が収益性に優ると感じていた、というのが有機EL撤退を決定した理由だというのだ。

問題は、この決定が下された時期、LGではすでに、はるかに効率性の高い有機ELディスプレイ向け製造プロセスの開発に着手していたという点だ。

LG製55インチ有機ELテレビの小売価格は、2013年の1500万ウォン(約152万円)から、今年はたったの300万ウォン(約30万円)にまで低下した、と同社は語る。

未来戦略室が関わったサムスンの決断が疑問視されるのは、これが初めてではない。

サムスン電子の崔志成(チェ・ジソン)副会長が室長を務めていた未来戦略室は昨年、サムスングループの事実上のトップである李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長が贈賄罪などで逮捕された政治スキャンダルの中で批判を浴び、閉鎖に至った。

李被告は容疑を否認しており、今年2月に控訴審で執行猶予付き判決を受け、釈放された。

サムソンは、同社が有機ELテレビを製造していない最大の理由は、画面の「焼き付き」、つまり長時間同じ画像を表示させておくと残像が残ってしまう問題だ、とロイターに説明した。

一方、LGは自身の米国向けウェブサイトのなかで、こうした焼き付き現象は、ほとんどすべてのタイプのディスプレイで生じ得るが、同社では画面へのダメージを防ぐ技術によってこの問題に対処し、短期的な問題を修正していると述べている。

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