スペア部品で荒稼ぎか、自動車メーカーの「隠れた武器」「価格設定ソフト」暗躍(1/3 ページ)

» 2018年06月12日 06時00分 公開
[ロイター]
photo 6月3日、過去10年間で10億ドル(約1100億円)を超える増収を実現した仏ルノーやプジョー、英ジャガー・ランドローバーといった自動車メーカーの戦略を支援したのは先進的価格設定ソフトだという。写真は中国の四川省成都市で2016年、PSAグループと東風汽車の中国合弁企業の工場。チャイナデイリー提供(2018年 ロイター)

[ロンドン/パリ 3日 ロイター] - 過去10年間で10億ドル(約1100億円)を超える増収を実現した仏ルノーやプジョー、英ジャガー・ランドローバーといった自動車メーカーの戦略を支援したのは先進的価格設定ソフトだという。

製作元のアクセンチュアが顧客向けに行ったプレゼンテーションによれば、そのソフトは各メーカーの顧客層がもっとお金を払っても構わないと考えるスペア部品、その望ましい値上げ幅、また値上げすべきではないパーツを特定する機能を持つ。

同ソフト開発を手掛けたローラン・ブーブール氏が裁判所に提出した訴状によれば、「値上げすべきではない部品」にはラジエーターや車体部品などが含まれる。保険各社の支援を受けたフランスの自動車保険修理協会(SRA)がインフレ率算出の際に価格を織り込む部品リストに、これらが含まれる可能性があるからだ。

この訴訟の関連文書は、仏ニュースサイト「メディアパール」が入手したもので、欧州の調査報道ネットワークEICとロイターにも提供された。

ロイターが閲覧した顧客向けプレゼンテーションと訴状の内容は、2009年から2015年までの期間をカバーしている。

ジャガー・ランドローバーは現在も、この「パートネオ」と呼ばれるソフトの使用を認めているが、同ソフトを今も使い続けている自動車メーカーが他にも存在するのか、ロイターは確認できなかった。

アクセンチュアは、このソフトが自動車利用者に不公正になる可能性を否定しており、自動車メーカーの効率改善が狙いだと主張する。

「企業による自社製品の評価・管理を支援するこの種のソリューションは、複数の業界で広く使われている。これらは企業によるスペア部品の見通しやその入手可能性についての分析を手助けするものだ」と同社は声明で説明した。

ブーブール氏は、アクセンチュアが欧州の競争ルールに違反したことにより、自身の評判が傷ついたとして、同社に3300万ユーロ(約43億円)の支払いを求めている。

同氏によれば、アクセンチュアは仏PSAグループのための価格体系を構築する際に、ルノーから入手した非公開情報を利用しており、他のメーカー向けにも同じことをやった可能性があるという。訴状では、具体的な情報を明らかにしていない。

係争中の訴訟について同氏はコメントできないと、彼の弁護士は語る。アクセンチュアは、同氏の訴えを否定している。

ルノーやジャガー・ランドローバー、プジョーは、スペア部品を巡る価格戦略は合法的であり、自動車オーナーの弱みに付け込むものではないと説明。効率を重視し、消費者の利便性を確保するものだと主張する。

プジョーは声明で、自らのスペア部品戦略は「購買力に関係なく、あらゆる顧客ニーズに対して最高水準の信頼性や安全性で対応できるよう、幅広いスペアパーツを提供する」ためのものだと述べている。

ルノーは、「顧客に多種多彩な高品質のスペアパーツを提供するよう努めており、その価格は、当社が公平かつ公正であると考える変数に基づいて計算されている」と説明。

またジャガー・ランドローバーは、「スペア部品全体のなかで価格設定に一貫性を持たせ、競合他社に対して適切な価格設定ができる」ように「パートネオ」ソフトを利用していたと語った。

フランスの競争監督当局は、過去に同ソフトの検証を行ったが、本格的な反トラスト調査を開始すべき理由は見当たらなかったと語るが、その判断根拠については説明を避けた。

ルノーは、自社の価格設定に関する非公開情報が他の自動車メーカーに流れたという認識はないと語る。PSAはブーブール氏の告発を退けたと言うが、同社のソフト設定の細部についての質問には回答しなかった。

アクセンチュアは、自身の「パートネオ」ソフトについて、「クライアントとのあいだで機密データや要注意データが共有されることはない」と話している。

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