「簡単、すぐに既存業務が自動化できる」というRPAへの誤解高まる企業ニーズの一方で……

日本は先進国の中で最も労働生産性が低い国の1つと言われている。長年IT活用による生産性アップが叫ばれてきたものの、大きな改善が見られないまま今日に至る。しかし近年、「生産性向上の特効薬になるのでは」と大きな期待を集めるソリューションがある。それが「RPA(Robotics Process Automation)」だ。

» 2018年07月04日 10時00分 公開
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働き方改革の切り札として急速に注目

 日本はこれから、世界でも類を見ない「超高齢化社会」に突入する。若い働き手の数はどんどん減っていき、近い将来あらゆる産業で労働人口が足りなくなると予想されている。そんな中、社会と経済をこれからも維持し続けていくためには、国を挙げて働き方を改革し、生産性を向上させる取り組みが不可欠だろう。日本は先進国の中で最も労働生産性が低い国の1つと言われており、長年IT活用による生産性アップが叫ばれてきたものの、大きな改善が見られないまま今日に至っている。

 しかし近年、「生産性向上の特効薬になるのでは」と大きな期待を集めるソリューションがある。「RPA」だ。

 これは人間がITシステムに対して行う操作をソフトウェアが代行し、作業を自動化してくれるというもの。特にPCを使った定型業務や繰り返し作業の自動化に大きな効力を発揮し、多くの定型業務を抱える金融機関などでは早くから導入が進んできた。

 それがこの1年ほどの間で、あらゆる業界において一気に脚光を浴びるようになった。その背景には、それまで海外製のサーバ型製品しか存在しなかったRPA市場に、純国産のRPA製品が登場し、日本のユーザーにとって導入ハードルがぐっと低くなったことが大きく影響している。

RPA市場が急成長している RPA市場が急成長している

 ある調査では、国内におけるRPAの市場規模は2016年から17年にかけて倍増しており、今後も急速に伸びることを予測している。そして、「いずれRPAはほぼすべて日本企業に導入されるだろう」という予測も出るなど、急成長が期待されており、今後はRPAの注目度がますます高まっていくものと見られる。その結果、金融業界以外の多くの企業も導入を検討するようになり、RPAのサービスやソリューションを提供する企業も一気に増えてきた。

 そうした企業の1社に、富士通マーケティングがある。同社はSI企業としてさまざまな業界の企業に対して多様なICTソリューションを提供しており、その一環として近年ではRPAも取り扱っている。しかも、単に顧客企業にRPAソリューションを提供するだけでなく、自社内においてもさまざまな業務を対象にRPAを導入し、その効果や課題を自ら体現しているという。自社内での導入・運用を通じて得たノウハウを生かして、より顧客に価値の高いRPAソリューションを提供しようというわけだ。

 同社はどのようにRPAを導入、活用しているのだろうか。その前にRPAのメリットや課題について言及しておこう。

RPAのメリットは?

 RPAの最大の導入メリットは、これまで人手で行われてきた作業を、比較的手軽かつ安価に自動化できる点にある。今までもさまざまなIT技術が「省力化」「自動化」を目的に導入されてきた。その結果、多くの企業ではかつて人手に頼っていた作業のかなりの部分を、PCで自動化できるようになった。

 基幹業務の多くはICTシステムによって自動化され、書類作成や計算処理といった細かな作業の多くはMS Officeをはじめとするビジネスアプリケーションや、それらを応用したEUC(End User Computing)によって効率化や自動化が進んだ。

 しかしこれでもなお、ほとんどの企業では膨大な量の人手作業が残っているのが実情だ。業務システムやEUCによって個々の作業は自動化されても、これらの間で情報を転記したり、情報の内容をチェックしたりといった作業は相変わらず人手に頼っている。

 例えば、業務システムが出力した内容をExcelシートに転記してレポートを作成したり、逆にExcelに記された情報を人の目でいちいちチェックしながらシステムに入力したりといった作業に膨大な人手をつぎ込んでいる。

 企業の生産性を底上げし、働き方改革を実現するには、こうした作業にもメスを入れていく必要がある。RPAはまさにこの点において大きな期待が寄せられているのだ。

 RPAがやることは極めてシンプルで、人がPC上で行うマウスクリックやキーボード操作といった作業をソフトウェアが代行することで作業の自動化を実現する。従って、現在人間がコンピュータ上で行っている作業は、基本的にはすべて自動化できる可能性がある。

 複雑な処理や演算を行うのではなく、ただシンプルに「人の操作をPCが真似る」だけなので、高価な業務アプリケーションのようにコストが掛かることもなく、また高度なプログラミングスキルも必要ない。従来の「システム開発やパッケージソフトウェア導入による業務自動化・効率化」というアプローチに比べ、導入ハードルは低いと言える。

 まさにこの点が多くの企業、とりわけ業務部門がRPAに着目する理由ではないだろうか。例えば、システムやアプリケーションの間の情報連携を人手に頼っている場合、これを自動化するには従来はシステムをカスタマイズする必要があった。しかしこれには通常、多くコストや手間を要する上、長年使われているレガシーシステムの場合は既に開発者が退職していて中身を知る人がいなかったり、仕様書が残っていなかったりなど、そもそも改修自体が困難なケースも少なくないだろう。こうしたケースでは、RPAによる人手作業の自動化が威力を発揮しそうだ。

“野良ロボット”が大量発生する事態に

 しかし、多くの企業が「これを導入すれば即座に業務が自動化される!」と、まるで魔法のツールであるかのように考えがちである一方で、「RPAの導入・運用はそう容易ではない」ことを認識する必要もありそうだ。

 なぜならば、RPAはあくまでも人の“操作”を自動化してくれるものであって、人の“判断”まで自動化してくれるわけではないからだ。またRPA製品には、人の操作を自動的に記録してシナリオ化してくれる機能が搭載されているものの、この機能だけでシナリオを組むことができないので、実際にはこれだけでは実用に耐えるシナリオを組むことは不可能である。

 さらに、PC上で人が行う操作は、さまざまな原因によって制約を受けている。例えば、システムやアプリケーションの処理完了を待つ時間。操作を記録していた際はたまたま2秒で返ってきた処理も、タイミングが違えば5秒、10秒とかかってしまうかもしれない。そうなれば、自動記録しただけのシナリオは待ち時間が変動するたびにタイムアウトして停止してしまう。あるいは、端末が変わって画面の解像度が変われば、それだけで画面上の操作対象の位置が変わってしまい、まともに動かなくなってしまうこともある。

 こうしたことを考慮せず、現場でRPAを導入し、人の操作を記録しただけのシナリオをいきなり業務に投入すると最悪の場合、頻繁に処理が止まってしまい「これでは人手の方がよほどマシだ」となりかねない。こうした事態に陥るのを避けるためには、RPAの導入を検討する段階であらかじめ想定される課題やリスクを洗い出し、特に、ミッションクリティカルな業務の場合は、ロボットが正常に動作しない場合を想定した、人手による作業手順の明確化など業務を止めないためにリカバリ手順を明確にしておく必要がある。

 RPA導入プロジェクトを自らが経験した企業には、「なぜこういうケースでロボットは止まってしまうのか」「止まらないためにはどうすればいいのか」といったノウハウが多くたまり、そうした知見をシナリオ開発に反映させられる。RPAの導入にあたっては、まずはこうした企業の支援を仰ぐことが近道だろうし、技術面では、シナリオをこと細かにプログラミングするのではなく、ICTベンダーが提供するライブラリーをいかに活用するかが重要になってくる。そのほうが後のメンテナンスがはるかに楽になるというわけだ。

 メンテナンスが困難になると、導入時の担当者が異動した途端にメンテナンスが放棄されてしまう、いわゆる“野良ロボット”が大量に生まれる事態にもなりかねない。

ロボットも人と同じように管理すべき

 野良ロボットを生むことなくすべてのロボットが現場で活用され続け、導入効果を十分に上げるためには、シナリオのメンテナンスをきちんと行える仕組みと体制の整備が重要となる。業務内容が変われば、それに伴いRPAのシナリオも更新される。しかしこの更新を誰それ構わず行ってしまうと、どのシナリオが最新版なのか、どれが正なのか判断がつかなくなり、混乱が生じてしまう。

 また先述の通り、安定稼働のためにはロボットやシナリオそのものだけでなく、稼働するハードウェアやOS、ミドルウェアの種類やバージョン、操作対象アプリケーションの種類やバージョンなど、周辺環境がうまくマッチする必要がある。場合によっては、これらのうち1つでもマッチしなければ途端にまともに動かなくなることも考えられる。

 そのためシナリオを管理する場合は、シナリオ本体のバージョンや更新権限をしっかり管理するとともに、周辺環境に関する情報とのひもづけも管理し、常に最新の状態に情報をメンテナンスしておく必要がある。

 こうした管理を怠っていると、徐々にロボットが安定して動かなくなり、業務現場からそっぽを向かれるようになった結果、野良ロボットの大量発生につながってしまうのだ。そのためにも、シナリオの管理やロボットの稼働状況を監視するための専門組織を設けるのが理想的だ。

 つまり、人の作業をロボットにそのまま置き換えるととらえれば、派遣従業員や業務のアウトソースを管理する組織や役職があるのと同じように、ロボットの働きぶりを逐一管理してそのパフォーマンスを評価するための組織や役職があって然るべきだろう。その役割を業務部門が担うのか、それともIT部門が担うのかは各企業の事情によってさまざまで、場合によっては実在する従業員の労務管理に近い管理体制が必要になるかもしれない。

 さらにもう1つ、RPA導入成功の鍵は「業務の大胆な見直し」だ。既存の業務フローをそのままに、単に個々の作業をRPAで自動化するだけでは、多くの場合その導入効果は限られてしまうことが想定される。また、内部統制の観点では、従来の人手による確認作業や承認処理などすべての業務を対象にしても問題がないのか、自動化の範囲を見極めることも重要だ。

 一連の業務フローの中に人の判断を伴う作業が多く含まれていると、そのたびに人手の作業が発生して“ぶつ切り”になるため、RPAによる自動化の効果が薄れてしまうだろう。例えば、人の判断を必要としない作業をひとまとめにしてRPAで一気に自動処理し、その後に人の判断を行うよう業務フローを変更したり、あるいは思い切って人の判断そのものを減らすといったように、RPA導入を前提とした業務改革を行ったりすることで、よりRPAの導入効果を高めることが期待できる。

 そうした視点で考えると、RPAの導入は単なる業務の自動化にとどまらず、企業の既存業務のムダを根本から見直すためのいい機会ととらえることもできるだろう。

 冒頭に述べた富士通マーケティングの狙いもまさにそこにあった。同社は働き方改革の一環でRPAの導入、活用に挑戦することになったのである。既にマーケティング部門や人事部門、財務部門などで取り組みが進んでいるのだ。次回より詳しく見ていくことにしよう。

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提供:株式会社富士通マーケティング
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2018年8月3日