急成長する「伝説のすた丼屋」 模倣を難しくしている独自の調理法と秘伝のタレ長浜淳之介のトレンドアンテナ(5/5 ページ)

» 2018年07月17日 10時51分 公開
[長浜淳之介ITmedia]
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豪快な見かけに反して繊細で奥が深い商品

 店舗数が顧客のニーズに追い付いていない現状をどのように打開するかが、今後の課題だ。すた丼の店舗は北は北海道から南は九州まであるが、1〜3店にとどまる県が多く、10店以上あるのは東京都(36店)と神奈川県(12店)のみだ。四国をはじめ空白になっている地域もまだ多い。

 すた丼のヒットを受けて類似商品を販売する店も増えているが、タレのレシピは社長をはじめ数人しか知らない極秘事項となっていて、完璧なコピーは不可能とされる。

 また、たとえタレの味がマネできても、従業員が中華鍋で豚肉の調理ができるようになるまでには相応の研修期間が必要だ。すた丼は豪快な見かけに反して繊細で奥が深い料理であり、鍋を返す回数によってにんにくの風味が飛んでしまったり、しょっぱい味になり過ぎたりする。人件費をカットし、簡素化したマニュアルで運営できるオペレーションではないため、どうやって無駄を削っていくかに注目したい。

 アントワークスはすた丼だけではなく、ステーキ「デンバー・プレミアム」(22店)、「伝説のステーキ屋」(8店)、十勝豚丼「き久好(くよし)」(13店)といった新業態で次々と成果を上げており、非凡な業態開発力、店舗展開力を見せ始めている。

 焦らず人材育成に注力すれば、大手総合外食企業に育つのではないだろうか。

著者プロフィール

長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)

兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。


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