ドル独歩高いつまで続く、相場動かす「5つの要因」金利差拡大など

» 2018年08月01日 16時05分 公開
[ロイター]
photo 7月30日、ドルは4月半ば以降、主要6通貨に対する指数ベースで6%近く上昇した。2017年6月撮影(2018年 ロイター/Thomas White)

[ロンドン 30日 ロイター] - ドルは4月半ば以降、主要6通貨に対する指数ベースで6%近く上昇した。新興国市場からは資金が流出し、ドル安を見込んでいた投機筋は損失を被った。米国の成長見通しにはいくらか不透明感が漂うが、ドルはまだもう少し上昇を続けるかもしれない。

ただリンデングローブ・キャピタルのBorut Miklavcic最高投資責任者は「数多くの材料が同時に作用しているので、ドルの今後がどうなるかは非常に難しい問題だ」と話す。

ドルの先行きを占うため、相場を動かす主な要因5つを検証する。

(1)金利差拡大

金利差と為替相場の相関は、昨年は米国の金利と利回りが日欧に比べて上昇したにもかかわらずドルが下落していったん崩れたが、足元ではまた高まっているようだ。

欧州は景気の回復により金利が上昇するとの見方が薄れた。イングランド銀行(英中銀)は4月に利上げ期待に冷や水を浴びせ、今週の会合では利上げが見込まれているが、さらなる利上げの公算は小さい。欧州中央銀行(ECB)は6月の会合で、来年夏まで低金利を維持すると表明した。

一方、米経済は第2・四半期の成長率4%強がピークだとしても力強く拡大しており、日本や欧州を上回るペースで成長が続くのは間違いない。

パインブリッジ・インベストメンツのシニア・ポートフォリオマネジャー、ロベルト・コロナド氏は「米国とその他の国では成長の格差が拡大し、中央銀行の政策の差も広がっている。米経済が第2・四半期に力強い持ち直しを示したのに対して、他の国では回復がみられない」と指摘した。

(2)米国への資金還流

米企業がトランプ大統領の税制改革に伴い本国に還流する利益は3兆3000億ドルと推計されている。米経常収支統計によると、第1・四半期の還流は約3000億ドル。これまでの還流資金の大半はドル建てとみられるが、「今後はドル以外の通貨建て利益の本国還流が増加し、ドル相場を支える」(バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ)との予測もある。

(3)通商紛争は米に追い風

米国は年間の国内総生産(GDP)に占める輸出の比率が12%で、ドイツ(約45%)や中国(20%)より低く、通商紛争の影響を受けにくい。

また中国の対米輸出は年5000億ドルだが、米国の対中輸出は1300億ドルにすぎず、対中貿易でも米国は通商紛争による影響が中国に比べて軽く済む。こうした点はドル買いの材料となるだろう。

(4)新興国からの資金流出

米国の金利上昇や中国の金融緩和を背景に、新興国から資金が流出しており、ドル高の要因となっている。

国際金融協会(IIF)の試算によると、5月と6月に新興国から流出した資金は140億ドル。7月分の統計はまだ発表されていないが、流出額はさらに膨らんだとみられる。

流出した資金は円やスイスフランなど安全な逃避先に向かうが、高利回りのドル建て資産にとってもプラスに働いている。

(5)ドルの利食い売り

一方、投資家がドルの利食い売りに動けば、地合いが急変してもおかしくない。ドルの買い持ちは4月以降3倍に膨らみ、1年半余りぶりの高水準となっている。

オプション売買の傾きを示すリスクリバーサルも3カ月物が対円、対ユーロともコールオーバー幅が6月につけた水準を下回っており、市場がやや警戒姿勢になっている様子が読み取れる。

(Saikat Chatterjee記者、Ritvik Carvalho記者)

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