日本の料理学校で外国人が「和食」より「洋菓子」を学ぶ深い訳スシやアニメだけがクールジャパンじゃない(2/3 ページ)

» 2018年08月03日 08時00分 公開
[服部良祐ITmedia]

目的は技術とビジネスモデルの会得

 こうして念願かなって大好きな日本の洋菓子を学び始めたプリンスさん。留学期間は2年で初年度は和菓子と洋菓子、パン作りを学ぶ。次年度にその中から専攻を選ぶことになるという。今は洋菓子だけでなくパンの方にも気持ちが揺れているが、あくまで「和」菓子は選択肢にない。

 「タイで作ったことのない洋菓子を作れるのが楽しい」と話すプリンスさん。一方、授業では菓子作りの説明で登場する難解な日本語を理解するのに骨が折れるという。「分からない言葉は予習しておかないと授業で困ったりする。でも友達が優しく説明してくれるので助かっています」(プリンスさん)

 製菓と調理の両校を合わせた辻調グループ全体で、プリンスさんのように18年度に入学した外国人留学生は314人と前年度に比べ74人も増えた。うち辻製菓専門学校には136人が入学。そのほとんどは台湾や中国、ベトナムなどアジア圏の出身者だ。同グループの担当者は「よその製菓専門学校でも外国人留学生は増えているようだ。ただうちは台北とソウルで学校説明会を開いていることもあり海外で知名度が高く、国内でも留学生が集中している」とみる。

photo 辻製菓専門学校で一緒に授業を受ける日本人とアジア系の留学生たち

 4カ国語で進路相談や日本語を教える補講を開くなど外国人留学生受け入れに積極的な辻調グループ。しかし担当者は「私たちもアンケートするまでは、彼らの主な留学目的が日本料理だと思い込んでいた」と打ち明ける。

 辻製菓専門学校に入学した外国人生徒が挙げた留学理由のトップは「日本の高い技術力」。実際、最近では多くの日本人パティシエが世界的な洋菓子のコンクールで入賞している。ただ、担当者は「彼らは特定の日本人パティシエに憧れて留学しているわけではない。むしろ日本の技術に加えて洋菓子のビジネスモデルを学びたい人が多い」とみる。

 タイやベトナムなど留学生の母国では日本ほど洋菓子が流行っていない場合が多い。「彼らは日本に洋菓子が溶け込んでいったステップに興味がある」(担当者)。洋菓子店はレストランほど開業にコストがかからず、実店舗を構えずにネット販売も可能だ。実際に製菓学校の留学生の半数以上が「卒業後は自分の店を開きたい」と回答。ゆくゆくは母国で洋菓子を流行らせる野望を抱く人も少なくないという。

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