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“毎日安売り”のオーケーとコスモスが着々と進める“西友包囲網”長浜淳之介のトレンドアンテナ(6/6 ページ)

» 2018年08月07日 06時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]
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袋麺を10円で売るコスモスの戦略

 コスモス薬品が運営する「ディスカウントドラッグコスモス」は関東ではなじみがないが、九州から東上して愛知県以西に店舗を広げており、あと数年のうちに首都圏に進出するのは確実だ。ドラッグストアというと関東ではマツモトキヨシの知名度が高いが、イメージとしてはウエルシア薬局に近い。特に、食品に力を入れており、過激な安さに特徴がある。ただし、調剤薬局は併設していない。

 コスモスもEDLPを推進しており、売場のレイアウトは西友に似ている。ウォルマートは「ネイバーフッドマーケット」と呼ばれるドラッグストアと食品スーパーを組み合わせた業態を米国で展開しているが、それを日本向きのフォーマットとして開発したと言えよう。

photo コスモスの売場レイアウトは西友に似ている

 コスモスではうどんや焼きそばの袋麺を1玉10円(税込、以下同)で売っている店がある。EDLPなので特売でなく毎日10円なので、飛ぶように売れている。袋麺はつゆ、ダシ、野菜、肉など他の食品を買わなければ食事として成立しないので、さまざまな食材の購入を誘発できる。これは、食品トータルでもうける巧妙な戦略だ。西友はどの商品も安いと言っているだけで、こういう目玉商品に乏しい。

 コスモスにおける食品の売り上げ構成比は55.6%となっており、医薬品の15.4%、化粧品の10.4%をはるかに上回る。しかし、医薬品や化粧品の利益率は高いので、食品を一般のスーパーより安く売っても十分もうかるのだ。食品で集客して、医薬品、化粧品でもうけるというのは、マツモトキヨシを除く、ウエルシアなど大手ドラッグストア業態に共通した戦略だ。

 コスモスは過疎地の人口1万人の小商圏で、2000平方メートルもの駐車場を備えた広いワンフロアの店をつくり、地域におけるデイリーな買い物ニーズを独占するビジネスモデルを、日本で初めて開発したとされる。ウォルマートのお株を奪う躍進ぶりであり、少子高齢化が進む日本では、ウォルマートはスーパーセンターではなくネイバーフッドマーケットで攻めるべきだった。これは明らかな戦略ミスだ。袋麺を10円で売られて、西友は持ちこたえられるだろうか。

photo 袋麺を10円で売るコスモス

限界を露呈した米国式EDLP

 西友は首都圏ではオーケー、地方ではコスモスの攻勢にさらされている。楽天と提携して8月14日からECショップ「楽天西友ネットスーパー」を開始するのに、ウォルマートの西友売却のうわさが絶えないのはなぜなのか。それは、日本で改良されたEDLPに対する、米国式EDLPの限界が露呈しているからなのだ。

著者プロフィール

長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)

兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。


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