フィンテックを活用した新しい融資ビジネスがこのところ急拡大している。従来型の融資に頼る銀行のビジネスが危うくなるというのは以前から指摘されてきたが、融資ビジネスへの他業種からの進出は予想以上のペースで進んでいるようだ。
これまで、企業に対する融資のビジネスは、銀行など金融機関の独壇場だった。金融機関の融資方法は古典的で、企業から提出された財務諸表を基に審査を実施。必要に応じて担保の提供を求め、その範囲内で資金を貸し付けるというものだった。
企業の財務諸表は基本的に1年に1回しか作成されないので、リアルタイムで資金の流れを追うのは難しい。節税対策などから非上場企業の財務諸表は「お化粧」されているケースが多く、必ずしも経営の実態を反映しているとは限らない。
こうしたギャップを埋めるため、金融マンは定期的に取引先に通い、社長と顔を合わせて情報交換することで、経営の実態を把握していた。こうしたやり方は、場合によっては柔軟な融資を可能にする一方で、恣意(しい)性を排除することができず、金融機関全体としてリスクを管理するためには、決算が良好な企業に融資対象を絞るしか方法がなかった。銀行が「晴れの日にしか傘を貸してくれない」と揶揄(やゆ)されるのはそのためだ。
だが近年、台頭しているフィンテックを使った融資は、従来とはまったく異なる概念で実施されている。新しい融資ビジネスの根幹を成しているのがビッグデータの活用である。
リクルートホールディングスは2017年に融資ビジネスに参入した。同社が活用するのは宿泊施設の予約サイト「じゃらんnet」や、飲食店、美容院の予約サイト「ホットペッパー」である。これらのサイトでは宿泊施設や美容院の予約、決済を行っているので、事業者の稼働率や資金繰りの状況がたちどころに分かる。
こうした情報を基にシステムが自動的に融資の可否を判断するので、決算書などを提出することなく、最短30分で審査が終了し、資金が振り込まれる。同社では今後、「ゼクシィ」や「カーセンサー」などの媒体を活用し、他業種にも融資ビジネスを拡大していく意向だ。
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