四半期決算の廃止案、米国株投資に悪影響も企業にはプラス面?

» 2018年08月21日 15時30分 公開
[ロイター]
photo 8月17日、トランプ米大統領が企業の決算発表義務を四半期から半年に延ばすことを検討するよう証券取引委員会(SEC)に要請したことが、市場関係者や金融専門家の間で波紋を広げている。写真は7月、ニューヨーク証券取引所(2018年 ロイター/Brendan McDermid)

[ニューヨーク 17日 ロイター] - トランプ米大統領が企業の決算発表義務を四半期から半年に延ばすことを検討するよう証券取引委員会(SEC)に要請したことが、市場関係者や金融専門家の間で波紋を広げている。

一部の投資家やアナリストから聞かれたのは、株主の目をふさぎ、企業の無軌道を許すだけでなく、米国株の魅力を損ない、公開企業への投資を縮小させかねないという懸念だ。

カンバーランド・アドバイザーズのデービッド・コトク会長兼最高投資責任者は「決算発表頻度を半分にすれば、弊害を招き、確立された規律を取り除くことになる」と警告する。

半年に1回の決算発表となれば、情報開示強化の流れに逆行する上、不正行為を呼び込む恐れがあると心配する投資家も出ている。

シンク・マーケットUKのチーフ市場アナリスト、ナイーム・アスラム氏は「金融システムに最大の抜け穴を生み出すレシピ」だと批判し、企業の不正が見つかるまでの時間が長くなりかねないとの見方を示した。

決算発表頻度減少に伴う透明性の欠如は投資家に打撃を与え、公開企業への投資に悪影響を及ぼす不安もある。

ヘッジファンドのマグラン・キャピタルを運営するデービッド・タウィル氏は「決算発表頻度が減れば、公開企業に対する投資が少なくなると断言できる。より多くの資金がプライベートエクイティや非流動性投資に流れ、個人投資家が苦しむだろう」と危ぶむ。

有名な空売り投資家で中国企業の不正会計を暴露した調査会社マディー・ウォーターズの創業者カーソン・ブロック氏は「投資家はショートでもロングでも、データが多い方が少ないよりも運用成績が良くなるのが常だ」と述べた。

投資家の主張によると、米国株が他のいかなる地域の株式に比べてもプレミアムを享受している理由の1つは、企業の財務情報報告に関する要求基準がずっと高いためだ。それもあってトムソン・ロイター・データストリームに基づくS&P総合500種の12カ月予想利益に基づく株価収益率(PER)は16.7倍と、欧州のSTOXX600の14倍を上回っている。

確かに投資家の中には、決算発表頻度が減少すれば経営陣が目先の業績を重視し過ぎる弊害がなくなるので、企業経営にプラスになるのではないかとの声もある。

BライリーFBRのチーフ市場ストラテジスト、アート・ホーガン氏は「公開企業の経営において『短期主義』の姿勢を弱めるべきだと長らく要望されてきた」と指摘した。

またチャールズ・シュワブのトレーディング・デリバティブ担当バイスプレジデント、ランディ・フレデリック氏は、決算発表頻度減少が株式市場のボラティリティー低下につながってもおかしくないとみている。年間で最もボラティリティーが高まるのは、四半期決算発表シーズンだからだ。

ただしこれは「コインの裏表」だ。エバーコアISIの市場ストラテジスト、スタン・シプリー氏は「半年に1回の決算発表になれば、投資家にとってサプライズを起こす公算も、より大きくなる」と話した。

(Lewis Krauskopf記者)

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