ビットコイン誕生10年、「半減期」による値上がり期待も次は2020年か

» 2018年11月02日 15時34分 公開
[ロイター]
photo 10月31日、米国の起業家でソフトウエア開発者のマーシャル・ヘイナーさんは、2011年に約30ドル相当のビットコインを祖父にプレゼントした。写真は2018年5月、ニューヨークのブロックチェーン関連イベントで展示されたビットコインのジュエリー(2018年ロイター/Mike Segar)

[ニューヨーク/ロンドン 31日 ロイター] - 米国の起業家でソフトウエア開発者のマーシャル・ヘイナーさん(34歳)は、2011年に約30ドル相当のビットコインを祖父にプレゼントした。あつらえた紙の財布に「10万ドルになるまで開けてはいけない」と書かれているのを見て、祖父は笑ったものだ。

ビットコインの価値はそこまでは上がらなかったが、それでも今では当時の200倍以上に膨らんでいる。

ビットコインは10月31日、サトシ・ナカモトなる謎の人物が銀行など第三者を介さずに決済できるインターネット通貨の概略に関する論文を公表し、この世に誕生してから10周年を迎えた。この間に大きな浮き沈みがあったが、誕生の初期にビットコインを買った投資家は、今年の冬に向けて落ち着きを取り戻すと楽観的だ。

ビットコインの管理作業を手伝って報酬を得る「マイニング(採掘)」を2009年に始めたヘイナーさんは、「ビットコインは大きく高下したけれど、ひるまなかった。ビットコインの技術を信じている。絶対に次のデジタルゴールドになる」と話した。

ビットコインの今の相場は1ビットコインが6200ドル前後。世界各国で規制強化が進み、仮想通貨絡みの犯罪が増えたため、昨年12月に付けた史上最高値の2万ドルから70%近く下げている。しかし創生期にビットコインを購入した投資家は十分な値上がり益を得ている。

2013年末にビットコインに投資したイスラエルの起業家、ダニエル・ペレドさんは「値下がりしても問題ない。一部を売却することができたからだ」と述べた。ビットコインは数年後にはまだ過去最高値を付けると見込んでおり、「まだ手元に残っている分もあるから、値上がりすればそれもうれしい」という。

ペレドさんが楽観的なのは、ビットコインがいずれ「半減期」を迎えて供給量が減り、値上がりすると見込んでいるのが一因だ。

マイニングは10分間隔で計算問題を解き、取引データをまとめたブロックの有効性の確認作業を行うもので、報酬としてビットコインが与えられる。ビットコインのマイニング報酬は4年に1度ほどのペースで半分になる。これが「半減期」で、ビットコインの価値の低下を防ぐ仕組みだ。

ペレド氏によると、次の半減期は2020年となる予定で、その後はビットコイン相場は上昇するはずだという。

2014年初めにビットコインを大量に買ったロンドンの投資家、ニコラス・グレゴリーさんも、半減期への期待からビットコインを保有し続けている。ビットコインは価値を安全に保管し、ネット経由で決済する可能性を持っているとみて、最初に手に入れてから一度も売っていない。

一方、ビットコインが現実世界で期待ほど普及したかったとして、幻滅を感じている投資家もいる。

ロサンゼルスのプライベートエクイティ(PE)のポートフォリオマネジャー、バーン・ブレークさんは、ビットコインが1万3000ドルだった今年1月にビットコインのファンドを清算した。1ビットコイン=120ドル前後だった2013年にビットコイン投資を始めたが、ハッカー攻撃やフィッシング詐欺の被害に遭ったという。

ビットコイン技術は決済で常に効率的な手段になるというわけでもない。市場関係者によると、処理に時間が掛かり、手数料が通常の取引を上回る場合もあるという。

ロンドンの起業家ジェツ・サン氏はビットコインが50ドル近辺だった2013年にビットコインを買い始めたが、17年12月にビットコインが最高値を付ける前に大半を売却。今は別の仮想通貨イーサリアムに投資している。「ビットコインでコーヒー代金が支払われ、ペイパルに取って代わるようになるとだれもが期待していた。ビットコインは使い勝手が悪く、一般人には利用できない」と述べた。

(Gertrude Chavez-Dreyfuss記者、Tom Wilson記者)

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