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» 2018年12月15日 06時00分 公開

「昇降ロープ式」「戸袋移動型」も:なんだこれは? 黄色いバーが並んだJR「新型ホーム柵」の正体 (1/4)

国交省や鉄道事業者はホームドアの整備を進めている。その一方で新型タイプの開発も進み、一部は実用化されている。知られざる新型ホームドアの世界とは。

[昆清徳,ITmedia]

 「なんだこれは?」

 ここは東京都の福生市と昭島市にまたがるJR拝島駅の5番線ホーム。黄色くて長いバーがまるで柵のように並んでいる。バーが自動で上昇し、列車の扉が開くとお客が次々と中に乗り込んでいく。そして、バーが下降して元の位置に戻ると、扉が閉まって列車は出発していった。

 拝島駅の階段には「『昇降式ホーム柵』の使用を開始いたしました」というポスターが貼ってある。線路上へお客が転落したり、列車との接触を防止したりするために設置したと書いている。ホーム柵に触れたり、物を置いたりするとセンサーが検知し、動作の途中でもバーが停止するようになっているという。

 JR東日本八王子支社の広報担当者に尋ねてみると、この昇降式ホーム柵は2015年から実験的に導入しているもので、「(メリットやデメリットについて)検証を行っている途中」だという。ちなみに、八王子支社管内でホームドアが設置されているのは拝島駅だけだ。

 駅のホームドアというとドアが横にスライドするタイプしかないと思い込んでいた記者は、昇降式ホーム柵以外にどんな珍しいホームドアがあるのか、調べてみることにした。すると、「昇降ロープ式ホーム柵(支柱伸縮型)」や「大開口ホーム柵」といった新型ホームドアが次々と誕生していることが分かった。

photo JR拝島駅にある「昇降式ホーム柵」

10万人以上の駅に優先してホームドアを整備

 15年に「交通政策基本計画」が閣議決定されたことを踏まえ、国土交通省や鉄道事業者はホームドアの整備を積極的に進めてきた。東京オリンピック・パラリンピックや、超高齢化社会の到来に備える目的がある。

 国交省の担当者によると、20年度までに約800の駅にホームドアを設置することを目標にしており、現時点では700以上の駅で設置が完了しているという。

 ホームドアは、1日の利用者数が10万人以上の駅を優先して設置する方針になっている。鉄道事業者がホームドアを設置する際、国が費用の3分の1を上限として補助する制度がある。鉄道事業者からの申請が多く、全ての要望に応じ切れていないのが現状だ。

 ホームドアを設置するには時間がかかる。設計段階から工事が完了するまで2〜3年を要することもある。なぜかというと、ホームドアはかなりの重量があるため、設置する前にホームの補強工事が必要になるケースが多いからだ。さらに、夜間しか工事ができないため、工期も長くなる。

 ホームドアの整備にはお金もかかる。1ホームを整備するのに数億〜数十億円かかることが多いという。

 国交省の調査では、16年度におけるホームからの転落件数は2890件となっており、このうち視覚障害のある人は69件を占める。また、転落した要因を見てみると、最も多いのが「酔客」で1781件となっている。10〜16年度の転落件数は横ばいの状況が続いており、重大な事故を防ぐためにはホームドアの導入が欠かせないが、工期や費用の面で一朝一夕にはいかない事情がある。

 そこで、現在、さまざまなタイプの新型ドアの開発が進んでいる。国交省が公表している「新型ホームドアの技術開発と実用化について」という資料を参照しながら現状を解説しよう。

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