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「仕事は楽しい」は幻想か? 「発想・アイデア」が経営資源になるこれからの企業に必要なもの【新連載】組織の生産性を上げる「楽しさ」の作り方(1/2 ページ)

» 2019年10月25日 11時40分 公開
[塩見康史ITmedia]

 こんにちは。スコラ・コンサルトのプロセスデザイナーの塩見康史です。私は組織開発コンサルティングに携わるとともに、それとは別にクラッシック音楽の作曲家としても活動をしています。

 これから、5回にわたって「楽しいと生産性」をテーマに、スコラ・コンサルトとサイボウズ チームワーク総研が共同で連載を進めていきます。

生産性を上げるために経営層がやるべきことは?(写真提供:ゲッティイメージズ)

「仕事は面白くない」人がまず考えるべきこと

 仕事は楽しいに越したことはないと頭では分かっていても、「現実には、仕事はつらいもの、面白くないものもの」と感じている方も多いのでないかと思います。

 しかし、私たち(スコラ・コンサルト、サイボウズ)は、あえてこれからの時代に求められているのは「楽しいがあふれる会社」であると言いたいのです。その方が個人にとって良いのはもちろんですが、会社や経営にとっても、「楽しい」方が生産性が上がる理由があります。「楽しさ」を肯定することは、組織の中で「個人の幸福」を大切にすることです。個人がどれくらい幸せでいるか、「楽しさ」はそのバロメーターなのです。

 ここでいう「楽しい」とは、仕事で「好きなこと」「得意なこと」「やりたいこと」に取り組み、自分の能力を思い切り発揮することで得られる「充実感」「達成感」を指しています。

 好きなことをしているときは、夢中で没頭し、時間は止まっているように感じます。そういう状態は、とてもクリエイティブな状態です。また、自分にとって、あるいは社会にとって「とても意味がある」と感じることをしているときも「楽しさ」を実感します。

 このように「楽しい」は、「好き」「没頭」「意味」などのキーワードと深く結びついています。これらに共通しているのは、仕事「そのこと自体」を有意義と感じていることです。

 なお、私の経験からいうと、作曲をしているときは、まさに深い没頭状態にあります。さまざまな情報やアイデアが脳の中を飛び交い、反応し合い、さながら混沌の状態ですが、強いエネルギーの渦の中から新しいビジョンが創造されます。このプロセスでは、まさに「楽しい」があふれており、とてもクリエイティブな状態です。

「発想・アイデア」が収益の源泉に

 これからは、ますます「発想・アイデア」が経営資源として重要になってきます。生産性を上げるには、「コストを下げる」「売上を増やす」という2つの方法がありますが、コストカットには限界もあり、新しい価値の創造を通して、売上を増やしていくことがより重要となります。この新価値創造には優れた発想が必要です。

 しかし、発想やアイデアは、分析と違って、決められた手順で行えば成果を得られるという性質のものではありません。生身の人間が、探究心と好奇心に駆られて、自分の感性や脳をフル回転させて、没頭することで、あるときふっと生まれる。発想・アイデアとはそういう性質のもので、「やらされ感」から優れたアイデアが生まれることはありません。まさに「楽しさ」をエネルギーとして生まれるものなのです。

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