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ジョブ型への移行、オフィス半減 富士通・平松常務に聞く「真のDX企業へと脱皮する要点」アフターコロナ 仕事はこう変わる(1/5 ページ)

» 2020年08月19日 05時00分 公開
[中西享ITmedia]

アフターコロナ 仕事はこう変わる:

 新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、業務の進め方を見直す企業が増えている。営業、在宅勤務、出張の是非、新たなITツール活用――先進的な取り組みや試行錯誤をしている企業の事例から、仕事のミライを考えていく。

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 富士通は、新型コロナウイルス感染拡大を受けて、国内のグループ会社を含めたオフィススペースを今後3年間で半減させる方針を打ち出した。同社はコロナ禍で出勤率を最大25%に抑える働き方を推奨してきた。同時に人事制度もこれまでの年功序列型から、業務内容を明確に定めた「ジョブ型雇用」に全社員を移行させる。

 デジタルトランスフォーメーション(DX)を率先して実行する富士通で今何が起きているのか。同社の総務、人事の責任者を務める平松浩樹常務にインタビューした。

photo ひらまつ・ひろき 1989年富士通に入社、2004年プロダクト事業推進本部勤労部担当部長、15年ビジネスマネジメント本部セールス&マーケティング人事部長、19年グローバルコーポレート部門総務・人事本部長、20年4月から執行役員常務総務・人事本部長。54歳。大分県出身(撮影:小澤俊一)

出社率の上限を25%に

――コロナ禍でテレワークを本格的に導入してみた手応えは。

 工場を除くオフィスで働く富士通の全社員(約8万)を対象に、上限で社員の25%の出社しか認めないようにした。実際には10〜15%の出社しかなく、あとは在宅ワーク、つまりオンラインによって仕事を回すことができている。最近では、出社しても、自分の机でテレビ会議をしている社員も多い。テレワークがかなり定着してきた実感がある。

 富士通では2017年からテレワークを積極的に推進し、2年間ほど進め、週1日以上のテレワークを40〜50%の社員がするようになり、浸透してきたとは思っていた。ただそうはいっても、在宅での仕事は不便なこともあると思っていた。だが、今回のコロナの影響によって社員が2カ月間、テレワークをしたことで、会議も全てオンラインで行い、顧客に対しても問題なくサービスを提供できた。約9割の仕事ができたので、非常に大きな自信になった。

――オンラインのメリットはどんなところにあると感じているか。

 役員も社員も皆オンラインで働き、意思決定し、情報を共有できる。これが、時田隆仁社長(正式表記:「隆」は生きるの上に一)が日ごろから言っている「ニューノーマル(新常態)時代の働き方」だ。コロナ以前の「ノーマル」の状態にはもう戻らないという確信が得られたので、ニューノーマル時代の働き方を考え始めた。

 これだけテレワークで仕事ができるのなら、オフィスには何をするために出社するのか。メールなどのデスクワークはテレワークでできる一方、ホワイトボードを使ってみんなで議論をしたり、チームで何かをしたりするときは出社する意味がある。こうした働き方の最適解が何となくイメージできてきた。

――オフィス面積を3年間で半減する。具体的にどのように減らしていくのか。

 ネットワークを使ったテレワークによって仕事が進む一方で、5%程度しか社員が出ておらず閑散とした状態になっているオフィスもある。それなら本社を含めてオフィスを半分に減らし、業務の目的にあわせ自由に選択できるワーク環境を用意した方が、効率的で生産性も上がる。首都圏には1000人規模のオフィスがいくつかあり、そうなると当然、既存のオフィススペースは要らなくなる。一部のオフィスは賃貸契約を解約することになる。これは決して経費削減が目的ではなく、あくまでデジタル時代の働き方改革の一環だ。

 そこで、首都圏では、エリアごとに3カ所ほどハブ拠点を作ることにした。社員には「今日はオフィスでどんな仕事をし、ハブ拠点では何をするか」といったように自律的に仕事の仕方を考えてもらいたい。その上で、選択肢としてハブ拠点を活用してほしい。

 ハブ拠点は、仕事ぶりを顧客に見せるようにする。これまで執務室は顧客に見せないのが普通だった。これからは積極的に見てもらいたい。アイデアを出し合いながらイノベーションを起こしていくDX企業へと移行する富士通のやり方を知ってもらい、信頼を得ていきたいからだ。

photo オフィス面積を3年間で半減するため一部のオフィスは賃貸契約を解約することになる(以下、資料は富士通のWebサイトより)
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