それが実現すれば、下手すると鑑賞したい映画を「法律」によって劇場で見ることができないような状態になる。そんなことになれば映画産業自体が衰退する恐れもあるため、現状では、慎重な議論を求める声も出ている。ただ独立系映画などの制作者らは、自分たちの作品を上映する機会が増えるために、議会の動きを歓迎しているらしい。
もともと韓国は1998年まで、日本文化の流入を制限していた。そんな歴史からも、流入する「文化」などには敏感なのかもしれない。
いずれにしても、中韓のどちらのケースも、根底にはハリウッド映画の影響力が強いという現実がある。ちなみに米国では、ハリウッドの中でも、『アナと雪の女王2』などを送り出しているディズニーの人気が拡大を続けている。2015年から記録的な興行収入を毎年更新し続けている状態で、現在のマーケットシェアは33%を超える。
ただこれがどれだけ拡大しても、フェアに国民がその作品を求めている結果ならば、米国は規制などしないだろう。さらには、米国の政治的なメッセージをひそかに既成事実化して入れ込むようなこともしないはずだ。
とにかく、ハリウッドの影響力にそれぞれのアプローチで対応する中国と韓国は、ハリウッド映画を純粋に楽しもう、というわけにはいかないようだ。
山田敏弘
元MITフェロー、ジャーナリスト、ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。最新刊は『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)。テレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。
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