米国でクラフトのマカロニ&チーズといえば、値段も手頃で鍋ひとつで簡単に調理できるため、忙しい家庭では定番のメニューとして人気だった。米国人なら子供のころによく食べたと記憶に残る、いわばノスタルジーを感じるアイテムだ。過去にはどの家庭にもこの商品がストックされていて、「国民食」とまで言われる時代もあった。
ところが、米国では過去40年ほどの間に、人々の食生活が大きく変化してきた。缶詰、冷凍食品、ドライフードは保存食品としてよく消費されていたが、近年はより鮮度の高い生鮮食品やオーガニック食品、食品添加物を使用しないナチュラル食品などを消費者が好むようになってきている。
こうした背景もあり、15年末頃からクラフトのマカロニ&チーズも、象徴的な黄色を人工着色料ではなく天然着色料に切り替えてきた。
その後、企業合併により業界で世界第5位の巨大企業となったクラフト・ハインツ社は、人員削減や工場の効率化によるコストカットでビジネスの立て直しを図ってきた。しかし、期待されていた業績を上げることができずにいた。
一部の分析では、クラフト・ハインツ社の業績が回復しない理由は、コストカットに力を注ぎ過ぎて、消費者の好みが変化していることへの対応が遅れていることが指摘されていた。
ところが、そこへ新型コロナのパンデミックが発生した。普段はヘルシーな食生活を心がけてきた消費者ですら、ロックダウンのストレスを癒やすため、ノスタルジーを感じる商品を求めるようになるなど、加工食品がバカ売れする事態となっている。
加工食品のブランドを多く取り扱う、クラフト・ハインツ社にとって願ってもないチャンスがやってきたのだ。サンフランシスコやニューヨークなどの大都市では、クラフトのマカロニ&チーズが売り切れ状態になる事態も発生した。
思いがけない事態に、クラフト・ハインツ社は全米にあるすべての工場を24時間無休で稼働させ、需要が高まっている商品の生産を急いでいる。近年、工場の効率化を進めてきた同社にとって、その成果をついにアピールするときがきたようだ。
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