中国は、コロナ禍の影響から経済が大幅に落ち込んだものの、感染拡大の初期段階で行動制限等の措置を素早くとったことにより、現状、生産など経済活動は他国に先駆けて正常化しつつある。
中国の主要経済指標の推移
製造業PMI(購買担当者のセンチメントを示す指数)は、コロナ・ショックで一時35.7まで落ち込んだが、すぐに回復して好不況の境⽬である50を超えて改善している。しかも、生産が過去の水準に回復したばかりでなく、例えばマスクや医療関連商品については急激に生産能力を増強したようで、将来の過剰生産への懸念が出ているほどだ。
一方、消費は飲食などサービス業の回復が遅れたことや、都心部への地方からの出稼ぎ労働者が動きにくかったことなどから、回復は遅れていた。しかし、製造業の回復や国内移動が再開したことなどから、失業率の低下や可処分所得の回復などがみられ、自動車販売が回復し、映画館では定員規制が徐々に緩和され、飲食店でも客足が戻っていることなどから、財だけではなくサービス業を含む消費の回復が明確になり始めている。
- 投資からみた米中関係:現状維持予想
米中の対立は、今後おおむね現状で推移するだろう。一言でいえば、今後、中国と米国の貿易・安全保障における対立が(舌戦などではなく幅広い輸出入制限となって)ますます激化し、両国経済が苦境に陥る可能性は非常に低いとみている。米中の相互依存が緩やかに低下することは、日本やその他の国の企業のチャンスを増やすかもしれない。
- コロナ禍で産業構造は変化しているのか
産業構造変化の観点からみると、経済と主要株価指数は以前から乖離しており、今回のコロナ・ショックで偶然に加速した。数年かかると思われた変化が、コロナ・ショックをきっかけに一気に進んだ面はあるが、ショック自体が業種別比率の変化の方向を変えたのではない。
- コロナ・ショック後の経済成長と景気
コロナ・ショックは、失業者数などでみるとリーマン・ショックを超えるとみられるが、財政出動や金融支援、ロックダウン(都市封鎖)などの解除で短期間でいったん終息するとみている。そうなれば景気サイクルとみてよいだろう。
- コロナ後の世界 緊急事態から格差縮小へ
財政政策の重要性について、コロナ・ショックの前後で社会の認識が大きく変わる。財政政策を担当する政府と、金融政策を担当する中央銀行の重要性が増すだろう。「コロナ後」の人々は、政府の管理などを以前よりも信頼するようになり、“自由からの逃走”(権力への依存)の傾向が強まるかもしれない。また、GAFAなどと呼ばれるSNSの「プラットフォーマー」たちは、社会的存在意義が増すとみている。
- 「世界の工場」中国への依存度
世界経済の観点からみると、中国の消費は世界経済にとってそれほど重要ではない。むしろ、中国は世界の工場として、いわゆるサプライチェーンの生産拠点として重要な意味を持っている。
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